外国人参政権に反対する人のチラシなどを見たら、日本に住んでいる外国人は、日本の敵のように扱われることは多い。外国人犯罪に誇張したり、不法入国を訴えたりすることは極めて多い。だが、そのことは偏向な見方だと思う。
先ずは、不法残留者の数を考えよう。法務省の統計によると、平成20年には15万人弱だったそうだ。警察庁の統計(26頁)によると、それに役2万人の不法入国者を加えるべきだそうだ。それに対して、法務省の統計によると、日本に中長期滞在する外国人の総数は、平成20年には220万人を超えたそうだ。要するに、日本に住んでいる外国人の内の不法残留者は、8%に過ぎないということだ。対照的なのは、アメリカの場合だ。アメリカの政府の統計によると、2008年の合法滞在者の総数は1260万人で、不法残留者の総数は同時点で1160万人だったそうだ。ほぼ同じ数字だ。
だから、最初に強調したいことは、日本には不法滞在者問題はあまりないということだ。総合人口の1000分の1で、外国人の15分の1に過ぎない。完璧な制度はないので、現実的にあまりより良くできないのだろう。
では、外国人が犯罪を犯すとも言われる。確かに、犯罪を犯す外国人もいる。犯罪を犯す日本人もいる。入国審査は完璧ではないので、たまに犯罪者を誤って入国させるし、たまに入国してから犯罪者になる場合もあるだろう。だが、日本人は同じだ。逮捕された警官や裁判官さえいるので、存在だけには意味はない。割合や統計は重要だ。
警察庁の統計を見たら、来日外国人の犯罪件数は、この数年減る一方だ。検挙人員の総合数は、平成21年には、1万3千人に至らなかった。該当外国人の1%を満たないだろう。そして、その間5千人弱は入管法違反で逮捕されたそうだ。
入管法の違反は「本当の犯罪」ではない。WiLLでの記事でもそういう言い方があるが、考えたら明らかだ。確かに犯罪だし、罰則も当たる。しかし、「犯罪の行為」を聞いたら、連想するのは殺陣、強盗、窃盗、詐欺等だ。毎日工場で一生懸命働く生活は思い浮かばない。だが、入管法だけに違反すれば、犯罪はそういうことを指す。所謂3Kの汚い、きつい、危険な仕事をする外国人は、不法滞在であっても、国民の安全の敵というのは過言だと思う。
だから、滞在する外国人の間に、犯罪者は極めて少ないし、その犯罪者の間に働いて生計を建てる人も3分の1も占める可能性は少なくない。滞在する外国人を脅迫として捉えるなら、犯罪は根拠にならない。少子高齢化に向き合う日本では、日本で労働することは、むしろ国益になるばかりだ。
入管制度は必要だが、殆どの外国人がそれに従うようだし、日本の国益に貢献する。制度の詳細を論じるのはいいが、基本視点は入国する外国人は国益に貢献する考え方だと思う。抑制しないと大変なことになる恐れを裏付ける証拠はない。
コメント
“入国者は国敵ではない” への2件のフィードバック
いつも興味深く読ませていただいております。
突然のコメントをご不快にお思いなら、削除して頂いて構いません。
デイビット様のブログの中に再三登場する外国人参政権問題ですが、デイビット様はこの件に関して問題の焦点を見誤っているように感じます。失礼な言い方をすると日本の抱える問題を理解していないように感じます。
デイビット様にどの程度のご理解が有るのかは分かりませんが、この問題の中心は在日外国人の6割近くを占める在日韓国・朝鮮人と在日中国人にあります。ここに日本独自の問題があります。
簡単に言うと、深刻な領土問題を抱え、互いが負の感情を払拭できず、軍事的には互いに仮想敵国とも言える彼らが反対派の懸念の中心なのです。
例えば領土問題のからむ選挙で、彼らは日本国のみの国益と防衛、安全保障を念頭として一票を投じるのでしょうか?
上記の国と日本が戦争状態に入ったときに、日本の国益を前提とした義務を履行するのでしょうか?
それらを承知するなら、何故、帰化を拒むのでしょうか?
在日韓国人・朝鮮人などは日本で生まれ、日本文化の中で育ち、完璧な日本語を喋ります。ハングルを書けない人もいます。しかし日本への帰化は拒絶します。
そんな彼らの「日本の国益を尊重する」という言葉には矛盾すら感じます。
ありえない例ですが、イギリスと日本の間で戦争が起こったらデイビット様は日本の義務(有事法制)を日本のために完璧に行使できますか?その行動は祖国であるイギリスに明らかな不利益を生じさせる行動です。迷うことなく行動できるでしょうか?個人的にはそれを外国人に求めるのは酷なことだと思います。
戦争と地方参政権は全然違う話だとお思いでしょうが、地方参政権は有事下(戦争下)での法的根拠を無力化する力が有ります(無防備都市宣言など)。それが日本人だけではなく、外国人のイデオロギーが混ざった状態で可決されたとしたら、その判断は日本の国益だと言えるのでしょうか?
もちろん情勢が安定している欧州では無視できる問題かもしれませんが、東アジアの情勢は大変不安定なのが現実です。北朝鮮が日本列島上空にミサイルを飛ばし、日本と領土問題を抱える中国が不透明な軍事予算を増大させている今の状況では軍事衝突の懸念が有ります。「そんなの有りえない」「飛躍した議論だ」とは言えないのが東アジアの情勢なのです。
国には国の事情が有り、哲学や理想では網羅できない複雑な問題が有ります。
日本には日本の歴史的・地理的・社会的背景があり、それを理解しないと何故日本人の多くが外国人参政権に反対なのか本当の理由は分からないと思います。デイビット様がこの問題に更なる興味をお持ちなら、外国人の半数以上を占める在日韓国・朝鮮人、それと日本における華僑問題に対するご理解が必須と思います。
地方参政権の根拠を「外国人も地域社会のために働いている。それは日本の国益になっている」というのは問題の一面しか見てないように思えます。
更に言うなら今の外国人参政権案は対象を「特別永住外国人」と「一般永住外国人」に分けた議論が存在します。前者はWWⅡ以前に日本に来て定住した朝鮮人のみに与えようという意見です。つまり戦後保障の問題も絡んでいて、更に複雑なのです。
デイビット様が在日イギリス人の立場からご意見をおっしゃるのは日本人にとっても大変有意義で歓迎されるべきことです。しかし以上に述べたような日本の事情をご理解いただけないと議論が噛み合わないのではと思い、失礼を承知で長文を書かせていただきました。
Masa様、コメントをありがとうございます。返事が大変遅れましたが、申し訳ございません。
おっしゃる通り、東アジアの国際関係にはヨーロッパにはない緊張感があります。そして、中国に対しての恐怖は愚かではないのは事実です。ですから、慎重に考えた方がいいと思いますし、外国人参政権に反対する動機は人種差別だとは簡単に言えないとも判断します。その上、私にはまだ深く理解していない点も沢山ある現実を痛感します。
ただし、この哲学的な立場も考えたほうがいいと思います。参政権が問題になる人に永住権を与えるべきなのかどうかは、論争の焦点になれるかもしれません。入国管理の基本方針についても、ちゃんと論議したほうがいいとも思います。その場合、入国者は、入国者であるからこそ国敵であるわけはないことを強調したいのです。もし、国敵になる人が入国しようとしたら、その場で拒んだほうがいいのではないかと思えます。
(在日韓国人・朝鮮人の問題は複雑で、私がよく分からないのは知っていますので、なるべく避けたいと思います。)
言いたいことを括ると、私の主張する側面を忘れないでほしい。これで論争はもう終わりだと言いたくありません。