柳田國男の『遠野物語』〜神道を知る講座VII第9回

國學院大學のオープンカレッジの神道古典の講座が最後に近づいているので、20世紀に刊行された書物が課題になった。今日の講義で、柳田國男の『遠野物語』が語られた。周知の通り、『遠野物語』が岩手県遠野市の伝承を伝える本だったが、明治43年に自費出版され、最初は350部しかなかった。すぐに絶唱されたので、20世紀の日本の文化に大きな影響を与えたと言われるし、現代の神道学にも基礎的な学者の処女作だったとも言える。

柳田國男が結局民俗学という新しい学問の分野を拓いたが、小学校に通ったかどうかは不明だそうだ。上京したら、一流の中学校と当時の第一高等学校や帝国大学に入学したが、ここで親戚の働きが見えるなのではないかと先生が言った。それにしても、大変有能な人だったので、総理大臣にもなるだろうと思わせるキャリアがあったという。併し、政治家になるより、学者になったので、重大な成績を残した。『遠野物語』を著した当時にもこのような計画を持ったことは、本の序文から分かるそうだ。かなりの自信を持った人だったようだ。

柳田國男が主張したことは、本に納まれた伝承は当時に遠野で信じられた話だったということだった。御伽話ではなくて、明治時代に本当に起きたことを描写したと住民が信じた、と。死者を合う話や神隠しの話は多いので、本当にあったかどうかは今疑わしいが、世界観を表現する話として柳田國男が紹介した。内容的に講義は詳しくなかったが、例えば明治時代の大津波で妻と子を失った人が、夜中に妻と結婚する前の交際相手で津波に死んだ人と一緒に会って、妻に「この人と結婚している」と言われ、「子供が可愛くない?」と聞いたら、妻の顔色が変わって泣き始めたという話もあるが、現代の立場から見れば夢か幻想かというだろう。そして、伝説になる話もあったが、昔の美人の三姉妹がそれぞれ観音様になったという説話もあったそうだから、神仏習合の民族的な側面だろう。

民俗学の立場から神道を検討するべきだと否めないので、柳田國男の書籍が読みたいとずっと思ったが、『遠野物語』から始まるといいのではないか。


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