わかりやすい神道の歴史

今読み終わった本はわかりやすい神道の歴史という本だ。この本は、神社本庁によって編纂されて出版されたが、神職の要請講座の教科書として使われるためにできたそうだ。

250ページで2500年の歴史を叙述する本だから、概ねしか書いてないのは言うまでもないだろう。だが、神道の発展の形が分かるようになるためにいいと思う。教科書として歴史学的な色は薄いが、この本から骨格を知ったら他の本の詳しい説明や深い検討が分かるはずだ。骨格が分からないと、詳しい検討が迷惑になる。

さて、江戸時代までの歴史で神道のさまざまな状況や色彩は紹介された。神仏習合、修験道、儒学的な神道など、全てがある。吉田神道はもちろん、伊勢神道、垂加神道などの学派神道も紹介される。熊野神社の仏教色が深かったことも、伊勢の神宮以外の皇室と深い関係あった熊野大社、岩清水八幡宮、賀茂神社などの役割も一応説明される。

だが、最後の明治以来の章に、いわゆる純粋の神道は日本人の倫理基礎として挙げられる。そして、神道の無宗教的な要素も主張される。これは、前の章との矛盾を抱えると思う。そして、明治期の節には、「神仏分離」という言葉さえ出てこない。前の章に仏教の神道にの浸透が紹介されるので、神仏分離も説明したほうがいいのではないかと思う。紹介される明治の政策より強い影響を与えたような気がしているが、他の本が間違えても、事実を説明したほうがいいのではないか。

基本的な問題は、明治以来の歴史は、神社本庁の歴史になる。組織が自分の歴史を書かせるなら、ちゃんとした歴史になる場合は非常に少ない。「神社本庁が推進する神道は、明治維新で作られた」というわけはないだろうが、そういう言論を主張する人もいる。だから、この本を見たら、明治まで信頼感があるが、明治以降ちょっと神社本庁のアピールっぽくなるような気がする。


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“わかりやすい神道の歴史” への1件のコメント

  1. […] 今日國學院大学での神道についての講座に行って来た。去年も同じシリーズの講座に行ったが、今年のテーマは神道と神社の歴史だ。時代の流れの通り神道のことを紹介してもらうようだ。講座のテキストは去年読んだ「わかりやすい神道の歴史」という本なのだから、復習の形になるかもしれない。といっても、全く覚えないこともたくさん入っているようだから、楽しみにする。 […]