出雲国風土記

出雲国風土記というのは、八世紀前半に編纂された旧出雲国の地誌的な調査の結果だ。山や川の位置を一々詳しく記すし、里の名前も位置も記す。その上、国のお寺や神社のリストもある。だが、一般人の私にとって、一番面白いのは、出雲の伝説だ。須佐之男命や大国主命が登場するが、他の神様も表れる。本の注に「他に見えない神様」がよく見える。

出雲国は、現在の島根県に当たると言える。隠岐島は別な国だったが、本州にある島根県は、旧出雲国だといってもいいと思う。出雲大社が出雲国に位置するのはいうまでもないだろうが、当時杵築大社と呼ばれたそうだ。神話を読んだら、大部分は断片しか残らないと言える。だが、最初に記載された国引き神話や山の女神と鮫の神話は、ちゃんと構成された神話になる。断片を読んだら、全体的に記載されたらよかったなと思わざるを得ない。そして、名称しか載らない神社にも神話があったはずだから、それも失った。残念に思うが、少なくとも島根県の神社は古いのが分かる。記載された神社の大半が現存するようだ。

もう一つの記事は、山や川に棲む鳥獣や植物もリストアップされる。これを見ると、密度が分かりたくなる。要するに、山には熊や狼があったのは明確に記されたが、何頭があったか分からない。それが分かったら、日本の自然環境の変化も分かるので、興味深い。

昔の史料を読んだら、いつも「もう少し記録してくれたらよかったのに」と思う。もともと記録されなかったこともあるが、記録が失われたこともある。両方はある意味で悲劇だと言えると思う。歴史が分からなければ、現在も分かり難くなると思う。だから、史料は大事な存在だ。ただ、風土記を全て読んだら、やはり退屈なところもある。私には、八世紀の山陰道の形は特に面白くない。では、興味深いところもあったので、読んで良かった。


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