中世の形成

日本史講座を読み続いている。第三巻は、平安時代から戦国時代までの社会変化を描写するが、興味深い点は多い。武家の政権の成立について、なぜ東アジアの他の国で起こらなかったのに日本に起こったかが論じるとか、家の制度の発生とか、古代の政権から転換したのはいつ頃かなどのテーマが扱われる。十世紀当初で政治の形が大きく変容したと述べる章も興味深かった。宇多天皇の時代はそのぐらい画期的だったのが分からなかった。

社会の構成の変化も注目すべきだろう。中世前半まで近世のような家制度はなかったことは特に気になった。11世紀までに一家という社会的な単位は、世代の夫婦を指した。母系も父系も重要だったようだから、後家(残された妻)が家の家産を司ったことは多かったようだ。別な側面から見たら、穢多の差別も中世に形成されたようだ。現代の立場から評価すれば、古代は近世よりよかったと言いたくなるほどだ。そして日本の伝統的な社会構造は、徳川幕府に構えられたようだ。伝統というのは、その前にも遡れるので「伝統だからいい」という基盤に依る人には気を付けた方がいいだろう。もっと古い伝統を見たら、家族の形態は大きく異なるし、政治的な構成も意外だと言える。

これは歴史を勉強する利点の一つだと思う。「伝統」というのは、普段「私の子供のころの状況」を指すようだ。神道の場合、明らかになる。なぜなら、明治維新で神道の変容は著しかったので明治三年からの神道は、「伝統的」とは呼べないが、もう明治以前の形が覚えられる人は少ないからだ。だから、伝統的に感じられることは、明治政府が作り出した習慣だと言える。だからといって悪いとは限らないが、「遙か昔からずっとこうだった」のは間違いだから、現状の上で論じたほうがいい。歴史の中で見える変貌が分かったら、これから社会が変わることも安心で受け止められるかもしれない。


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コメント

“中世の形成” への1件のコメント

  1. saieのアバター
    saie

    歴史というのは常に更新されていくもの。そして伝統とは長い時をかけて継承されてきた技術と様式。これらのものは色々な視点から論じることができると思う。だから、ひとつの形をもって文化を論じることはできません。

    というわけで、今のところチャートさんのような人は国籍を取得することはできませんが、将来はどうなるか予測できません。

    少なくとも私は新しい日本の形だと思っています。いわゆる在日も彼ら個人の心情は複雑かもしれませんが、やっぱり日本の文化に融合できる形をもっています。