神社有職故実

また神社本庁発のISBNもない本を読んだ。この本は、神社にある物についての説明だ。建物ではなく、御簾、狛犬、ご神体、大麻などのことは紹介される。興味深い。

殊に本殿の中にあるご神体の装飾や御座の構えも描写され、説明される。普段は本殿の中の状況が見えないので、分からなかったことが分かってきた。ご神体を包んで、箱に入れるのは普通だそうだが、ご神体は影像である場合、特に彫刻である場合、包めるかどうかは疑問だ。そして、如何に神社本庁から着た人でも、神社の本殿に入る訳はないので、どのぐらい現実に当たっているかも疑問だ。勿論、遷座するときに新しい本殿の内装が分かるが、かなり古い神社もあるし、その神社の固有伝統も保つはずだから、例外も多いかなと私が勝手に思った。描写された形は基準だというのは、疑わないが、隠れたことの現実がいつもちょっと気になるね。だから吉田兼倶が「秘密は敬虔を促すためだ」と言っただろう。

最後に装束の説明があったが、それは装束の本の略式だった。(著者は同じ人だし。)楽器の章も興味深かった。神道の楽器は殆ど中国から伝わったものだそうだし、平安朝の時代から使われたそうだ。だから、明治維新で復古をしたときに、雅楽はなぜ維持されたかはちょっと謎だ。平安時代以前からの習慣を、神仏習合を始め、排斥したが、同じ時代からの伝統を受け取ったことだから、長い伝統からただ好ましいことを選んだのではないかと思わざるを得ない。

この本によると、神社の伝統を継承するのは大事だそうだが、それと言っても詳しく定められたことは多い。そして、このほとんどは明治時代からのことだ。江戸時代に圧倒的な支配力を握った吉田家の伝統は払拭されたことは周知の通りだから、仏教のことを除いても明治維新が神社の伝統を尊敬したとは言い難いのではないか。その上、中央に据えた神社界の伝統は、即ち神宮の式年遷宮は、百二十年以上中絶されたことは認められた事実だ。明治維新は、まだ百五十年前の出来事ではない。だから、明治維新の変更から遡って、その前の神道の形から示唆を承けて、神社毎の伝統を作っても、神道の伝統を継承することなのではないだろうか。