小学館の新しい日本の歴史というシリーズの第一巻を読んだ。これはやっと最初から探していたシリーズだ。
第一巻は、4万年前から古墳時代、すなわち1500年前までの歴史を語る一巻だが、考古学に拠るのは言うまでもないだろう。最後の方にちょっと中国の書物に触れるが、最後まで考古学の成果を柱とする方針に従う。主なテーマは、気候の寒冷化と温暖化に左右されながら文化が歩むということだと言えるだろう。大陸からの影響も重視されるが、気候の変化に対応するために大陸から技術を輸入したのは結論なのかもしれない。
興味深い点は、温暖化期には地域色が濃くなるが、寒冷化になったら薄まるということだった。提案した説明は、温暖なら人が定住するので、世代から世代への伝統の伝達が主流になって、集落などのアイデンティティを主張する傾向が強まるが、寒冷なら人が資源を求めるためによく動くようになるので、集落と集落の間の伝播が主流になって、どこの集落でもほぼ同じ土器などを使うようになるということだが、説得力がある。
そして、モニュメントが演出する理想と現実との間の差が存在する可能性に注意する。例えば、縄文時代の環状集落は社会平等を演出することは否み難いが、副葬品を見たら格差があったことが分かるそうだ。逆に巨大前方後円古墳が求心力のある王朝を演出するが、強調する必要があったからこそ完全に受け止められなかったのではないか、と。地方の前方後円古墳を見たら、特に吉備の地方にはもう一つの王朝があったようだ。
この本は、日本の前文字社会の纏まれた歴史を分かりやすく語る。珍しい語彙や考古学の用語には必ずルビがあるので読みやすい。(そして、いよいよ高句麗の読み方、こうくり、が分かった。だが、美的モニュメントをいつもエステティクモニュメントとしてルビされるし、超自然的存在もスーパーナチュラルビーイングとしてルビされるが、それは英語をそのまま移動することだから、ちょっと違和感がある。)だから、日本の歴史への入門として本当に役立つと思う。賞を受賞したことはびっくりするほどではない。シリーズ全体には似ている編集方針があったらいいと思うが、読み続けるつもりだ。
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