古事記解説

これも神社本庁が出版した本だから、アマゾンのリンクはない。序文によると、目標は古事記の正しい解説を定めることだったので、1970年の神社本庁の正統的な教説を理解するために役に立つだろう。

その立場から考えれば、興味深い点があった。皇族を重視するのは驚くべきでもないが、神話に対しての態度に考えさせられた。それは、神話が文字通り事実を語らないことを当たり前として、当時の政治などの影響で神話が左右された形式についての推測も少なくない。皇族を裏付けるために神話を編纂したと言わんばかりだ。そして、所々に異論も紹介する。神武天皇の神話の後ろには歴史的な事実があったかどうかなど。(神武天皇の存在は確実ではないのは当たり前だが、40年前の神社本庁もそう認めたことはちょっと驚いた。)

これを読んだら、疑問が湧いてくる。神社本庁が継承した国家神道のイデオロギーは、復古神道からきたが、復古神道を提唱した人、即ち本居宣長と平田篤胤、が古事記などの文字通りの事実を信じたそうだ。それを信じないなら、復古神道の基礎がなくなるような気がする。具体的に言えば、皇族は実に天照大神の子孫ではなければ、皇族を特に尊ぶ理由はなんだろう。

ところで、古事記の序文で伝統が歪められたということは、解説によると内容が異なったことではなく、日本人が読めない中国語で記述されて、失う可能性があったということを指すと推測する。それを防ぐために日本語で古事記を書いたという。そうであれば、大失敗だった。古事記の日本語の表記は如何に独特で、書かれたとたん読めなくなったそうだ。また解読できたのは、18世紀の本居宣長だったそうだ。一方、中国語(漢文)で書かれた日本書紀がずっと読まれたので、つい最近まで日本書紀の伝説が影響を独占した。

この本が様々な側面から勉強になった。


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