タイトルの通りの本だ。前に読んだ上巻と異なる点がある。
先ずは、上巻は神社本庁編で、「公式」な例文集だった。だから、基本の祭祀の祝詞を中心にした。この本は、神社新報者編で、日本中の宮司達から集めた祝詞を載せた。だから、地鎮祭や葬祭、工場関係などの祝詞が載っている。ちょっと失礼な言い方を取れば、上巻は神社の義務の例で、この下巻は収入になる祭祀の例文になる。
二つ目の異なる点は、仮名遣いだ。万葉仮名ではなく、ひらがなの歴史的な仮名遣いだ。そして、ルビは少ない。漢字も古い形を使うことは多いので、読めなかった場合もあった。例えば、處は、所だとは分からなかった。といっても、何となく分かったし、祝詞の構造をもう少し深く理解できたので、勉強になった。
最後の興味深い点は皇室の位置だった。上巻について書いたが、上巻の祝詞で天皇陛下についての祈願は多かった。しかし、下巻にはあまりない。例外は、例えば奈良時代以前から皇室と深く関わる奈良県の龍田神社のような神社から投稿した祝詞にほぼ限られた。この本は、昭和37年出版で、まだ国家神道の影響が強いはずな時点で、もうGHQの尊皇禁止が解いた時点だった。にもかかわらず、皇室が祝詞のなかであまり現れない。
事実上、神道と皇室の関係を探るには貴重な糸口になるだろう。