宮益坂の御嶽神社

大山街道をちょっと遡って、渋谷の宮益坂に鎮座する御嶽神社(みたけじんじゃ)を紹介したいと思う。この神社には、三つの興味深い点があるが、社務所の定休日だったし、あまり問い合わせする余裕はなかったので、本当の経緯が分からない。

御嶽神社の境内の風景
ビルに囲まれた都会の神社の宮益坂に鎮座する御嶽神社

御嶽神社は、高層ビルの隙間に入っているのはいうまでもないだろう。宮益坂郵便局の隣に鎮座して、風景の写真から分かるように閉塞感がある空間だ。道から階段を登って、神社に至る。だが、境内を見たら、ビルの上にあるように見える。つまり、屋上の神社に見える。しかし、國學院で聞いた神社本庁の原則は、神社は「土の上、空の下」という状況だ。だから、本当に屋上だったら、神社本庁に認めてもらわないはずだ。だから、神社本庁に属していないか、それとも見た目と違って、実は廻りに掘り削られた丘の上に鎮座するだろう。

不動尊の祠の中の石像
境内に鎮座する不動尊像

そして、境内には不動尊が堂々と祀られる。ご存知の通り、神仏分離令で仏教の色があるものを神社の境内から出す義務が課された。そうなら、なぜここにあるのか。案内板によると、延宝9年(1681)からあった不動尊だそうだから、戦後に鎮座されたわけはないだろう。80年間別なところで保存され、渋谷の開発の内にここに遷座された可能性もあるだろうが、もう一つの可能性を見つけた。

神社での案内板によると、明治天皇が御嶽神社で休憩したことがあるそうだ。これは、明治3年、つまり1870だった。神仏分離はまだ完全に遂行されていなかっただろう。そして、明治天皇が不動尊に参拝したら、取り除くことが難しくなるだろう。だから、境内の外に移したら、神社に近くても問題にならなかったかもしれない。

理由はなんと言っても、また神仏習合の名残がある神社だ。

犬に似ている銅像の狛犬
御嶽神社の狛犬は本当に犬に見える

最後に、狛犬のことだ。写真で明らかだが、狛犬は本当に犬、または狼、に見える。これは珍しい。神社に参拝したことがあったら、狛犬は架空な動物で、ライオンに似ているのは普通だ。稲荷社では狐がその役割を担うし、日枝神社で猿が狛犬の役割に就くこともあるが、犬や狼は別だ。御嶽神社は普通岐阜県の御岳山系の神様だが、祭神についての案内板はなかったようだったので、この神社の場合がどうなるか分からない。だから、祭神の使いは狼だという可能性があるだろう。

この御嶽神社は有名な神社ではないと思うので、神社には強い個性があることをまた実感した。実は、大山街道沿いの神社に参拝しながら、個性的な神社ばかりだったような気がした。どこの神社でも同じだろう。神社神道は均一された宗教ではないことは明らかだ。


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