王室の役割

最近フォーサイトの2月号をやっと読み終わったが、掲載された記事の一つが「天皇制は日本の独裁者を防ぐ知恵だ」と述べた。それは間違いではないと思うが、日本独特の知恵ではない。イギリスも同じような制度がある。

大筋を描写したら、次の通りになる。最上層にある王様や天皇があるので、ある人が権力を集めて、独裁者になりそうになったら、天皇を盾にして倒すことができる。実は、小説にも良くあるパターンだ。悪質な黒幕は、王様の直接な関与によって鎮圧されることは、水戸黄門によくあるが、文学のどこでも見えると思う。だから、実現するために条件をちゃんと考える必要があると思う。

先ずは、王様には現実的な権力を与えないのは大前提だ。王様には事実上の権力があれば、王様自身が独裁者になる恐れが多い。イギリスの歴史でそういうことはよくあったが、それを防ぐための内紛が繰り返した。結局、19世紀頃、王室から現実的な権力はやっと剥奪された。

だが、もう一つの大前提はこれとちょっと矛盾する。それは、王様には名誉的な最高の権力があることだ。王様を盾にするために、王様の権利を表で問われる人はいない必要がある。そうではないと、現実的な権力を握る独裁者がすぐに弾圧できるはずだ。

このバランスをとることは、極めて難しいと思うが、無理だとは言いたくない。

しかし、民主主義も同じような役割を担うことができるのではないか。独裁者になりそうな人が必ず選挙に向き合ったら、国民の支持を得なければ退かれる。だから、王様と民主主義を組み合わせたらいいだろう。独裁者を防ぐことは、確かに憲法の大事の宿命の一つだ。

だが、王室を設けたら、案外な問題がある。それは王様の人権問題だ。王様は、生まれながら王様になることは決まっているし、憲法の中に役割を果たすために政治的な権力を取ることを禁じるのは必要不可欠だ。要するに、王子のキャリアは決まっているし、参政権もない。豊富な環境を与えることは代償にならないが、多分最低限の試みだと言えるだろう。

簡単な問題ではないが、深く考えるとますます複雑に見えるよね。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: