神道指令

今読んでいる故小野祖教氏の『神道の基礎知識と基礎問題』という本の中で、神道指令の影響についての部分がある。(本は長いので、373頁から383頁までだ。)これは、昭和40年代に著された意見だが、戦後の神道の再編に直接に関わった人の意見で、資料として貴重で興味深いと思う。

小野氏が書いたことから3点を取り上げたいと思う。

先ずは、神道指令のなかで神道を直接ではっきりに批判することをわざと避けたという意見だ。戦争中の日本政府は勿論神道指令で批判されたが、神道自体は、政府によって悪用された道具のように描かれたと主張する。その理由は、宗教と直接に戦いたくなかったからだと推測するそうだ。そうすると、占領軍の仕事がより難しくなるし、反発の恐れもあるし、それに大義名義にした「宗教の自由」と明らかな矛盾があるので、批判を間接的にしたと述べる。

それは、二つ目の点と繋がる。それは、小野氏によると、戦後の占領軍の下の時期に神道に対する指令について訴えたら、「それは私たちの自由を拘束する」か「それは神道にとって不公平だ」と訴えたら、認めてもらうことは殆どだった。苦悩の交渉もあったそうだが、「自由」や「公平」は、有効な錦の御旗だったと語る。要するに占領軍が本当に自由と公平を擁護しようとしたとの評判だ。

この二つの点を合わせて、神道指令は神道を弾圧する指令ではなかったとの結論を挙げる。

しかし、アメリカの占領軍は神道の味方だったとは言えないそうだ。むしろ、神道から不公平の国家の援助や奨励を剥いだら、神道が自然に衰退して絶滅するように期待したそうだ。それは、態度や『日本の宗教』との書物から分かったことだそうだ。そのような結果に至らなかったのは言うまでもない。だが、激変する社会の中で神道の取るべき姿勢を探るのは急務だとも述べる。

この本は、神社本庁によって神職を目指す人に薦められるので、渋皮健一氏が平成四年に訂正補注した。その時、この部分の最後にわざと「本稿は昭和四十年代の視点で書かれていることを了承されたい。」と補注した。これも興味深いことだ。本全般はそうだし、他のところで特に指定せずに補足したところがある。(例えば、神宮大麻の頒布の状況に、平成元年の情報が使われる。)そして、私的な意見として一部を削除したところもある。ここで、そのまま載せさせたが、注意を加えた。やはり、平成元年の神社本庁の意見と相違点があると推測するが(「現在の」と書こうとしたが、もはや20年前だよね。)どういう点には問題があったか、分からない。仮設は、神道指令をより否定的に評価することだ。『わかりやすい神道の歴史』でそういう否定的な評価が載っているので、そうだろう。

とにかく、興味深い内容だ。小野氏が言ったことは印象的だった。昭和40年代だったが、もう神道指令の状況を自然に思った人がいたから、神道指令の論争が神道界の外部と内部の間の論争から、内紛的なことになったと言ったことだ。私も、神道指令が導いた国家から自立する神道の状況のほうが好ましいと思うので、今なお益々そうなっているのではないかと思う。神道にも、戦後に激変があったと言えるのだろう。


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