神社本庁が編集した書物で、宗教活動以外の神社社務についての本だ。だから、神道に何となく興味がある方に勧められない。第二編は、宗教法人法のすべてを転載して、注釈を加えた部分だから、日本の法律の一つをすべて読んだ。TRPGのルールほど複雑ではないが、そう言ってもかなりややこしい。宗教法人の帳簿や登記の詳細について書きたくないが、ある点をピックアップしたいと思う。
先ず、神社本庁の規則のところで分かったことは、原則として一つの神社には禰宜が一人しかいないことだ。宮司や権宮司は一人であることは当然だが、ぼんやりと禰宜は複数いると思った。権禰宜に下がったら、「若干の人」が許されるが、ちょっとびっくりした。小規模な神社で、権宮司はいないので、禰宜は後継者だろう。そして、事実上制限にならないだろうとも思った。有数な神社であれば、特別に許可を得ることができるようだし、小さかったら神職が三人以上になる場合は少ないだろう。そうなっても、小規模な神社には兼務社があるのは通常であるようだから、他の神職を兼務社の禰宜に昇進させてもいいかもしれない。
職業についての規則でもう一つ気になった点があった。それは、巫女の雇用のための項目は明記されていないことだ。楽人や技人の項目があるので、神楽ができる巫女をこれで雇ってもいいだろうが、お正月のバイトの巫女を、どういう資格で雇うのかな。規則を見たら、巫女は公式に認められた存在ではないようだが、それはちょっと不思議だ。俗で神職より神社を象徴する人には区別された資格はないことはかなり面白い。
まだ雇用関係だが、本の欠点も気になった。宗教法人に勤める人の給料を給付するが、所得税、健康保険、雇用保険、年金などがかかるはずだ。宗教法人には免税の資格があるが、宗教法人で働く人には税金が課されると思わざるを得ない。しかし、この本がそのことに一切触れない。社務には、このような手続きは大変重要だと私が思ったが、神社本庁がそう思わないようだ。それはなんでだろう。間違ったら神社や宮司の損になるし、脱税が話題になったら神道界の名誉も損なえると思える。養成講座で別な本を勧めるかもしれないね。
最後に、法律の内容と解説との関係が興味深い点があった。それは、宗教法人法第七十八条の解説で、被包括関係を廃止とする宗教法人の代表役員や責任役員に、包括法人が罰則などを課することはできないと定められたことだ。解説で、「本条は正当な理由によって被包括関係を廃止しようとする」と始まるが、法律を見たら、「正当な理由」のような表現はない。法律で、離脱しても債務が残るとしか定められない。解説で、「個人的な利害や陰謀的な行為」が正当な理由にならないと書いてあるが、法律には根拠が見えない。関連条を読んだら、被包括宗教法人には離脱する権利を保障するような定めもあるので、全面的な解釈で取ったら、理由はなくてもいつでも離脱できるようだ。包括法人の許可は不要だし、包括法人が離脱を防ぐ為の行為も本条で禁じられる。
確かに正当な理由がなければ、離脱しない方がいいが、理由が離脱に足りるかどうかを決めるのは、当該宗教法人の責任役員のみだと法律が定めるように見える。包括法人には関与する権利はないことは第七十八条に明記されている。包括法人に通知する義務があるが、通知だけだ。包括法人には拒む権利はないようだ。
だから、なぜこのような重要なずれが法律と解説の間に発生したのだろうか。解説が法律の内容と背くとは言えないが、解釈として包括法人側にも離脱について判断する権利があるかのように書いてある。おそらく解説を書く人が少なくとも離脱する前に神社と神社本庁の間に交渉して妥協を探るべきだと思ったので、法律を解説したときにこの理念に影響された解説を書いたかもしれない。離脱する前に交渉することは理想なのは否めないが、法律でそれは書いてない。むしろ、私の解釈は、法律が被包括宗教法人の勝手で一方的な離脱の権利を保障することだ。その目的は、宗教の自由をより固定する為だと思う。行政の関与を一切禁じて、そして包括法人の関与にも制限を設けるという形だ。包括法人側から論じたら、包括法人から被包括宗教法人を守る必要を感じないことは当たり前だろう。それに、神社本庁の場合、それほど独裁的な包括をしていないようだから、離脱するラッシュも見えないし、包括法人に対する防衛の必要性も目の前ではない。だから、分かり難い解説ではないと言いたい。しかし、法律の主旨とちょっと異なるとまだ思わざるを得ない。
この本を読んで、神社の実務をもう少し分かってきたので、勉強になった。神職である方、それに神職になる方が少なくとも一回読むべきだと思うが、他の人には別に読む必要はないだろう。といっても、現代の神道を全体的に理解する為に欠かせない情報が含まれている。宗教活動に加えて、実務もあることは忘れてはならない。