『神道入門』

最近タイトルから内容がすぐに分かる本を沢山読んでいるが、この本も例外ではない。神道を紹介する入門書だ。だから、びっくりする内容はあまりないだろう。

章は五つあるが、「神」、「神社」、「祭・儀式」、「神話」、「歴史」で、典型的なテーマをカバーする。章の末尾にコラムもあるし、神様を数柱紹介するところもある。結論から始めたら、神道を紹介する本として問題はないと思うが、私の薦める本にならない。人によって好みが異なるので、他の人にはぴったりの入門書になるかもしれないけれども。

一見で見たら普通の神道の入門書だが、実は入門書によって内容や立場が異なるので、ここで、この本の特徴について書かせていただく。

先ずは、神道の「教え」には比較的に重点を置く。内容的に「神道には神学も戒律も殆どないし、聖典もない」とも書いてあることは言うまでもないが、神道にある限り教えを説明する。特に男女関係についてとお酒についての説明は割と長いと思う。趣旨は、神道が男女関係もお酒も肯定的に見ることだから、確かにそうだが、他の入門書であまり取り扱われない点だ。

そして、歴史の章で、紙幅の関係でかなり縮小され省略されたが、丁寧に日本の国外から神道に及んだ影響を紹介するし、特に仏教の影響を説明する。にも拘らず、国学と復古神道を紹介するところで、「神道以外の要素を除外して、純粋な神道に戻した」ように説明する。私は、国学者が自分の理想な神道を発想して、「復古神道」と名付けたが、歴史的に新しい神道だったと思うので、このような説明には矛盾を感じる。と言っても、歴史の章は本のなかで一番良くできたところだと思う。朝廷に拘りすぎずに、神道の様々な側面や展開を紹介するからだ。

朝廷と言えば、それもこの本の特徴の一つだろう。朝廷や皇室についての内容は極めて少ない。歴史に触れるが、仏教についての紙幅とほぼ同じだ。神話を神武天皇まで紹介するので、天孫降臨などの皇室の神話も紹介するが、皇室との関係を強調しない。そして、神道の「教え」のところで、皇室に触れるのは一回だけだ。伊勢の神宮も、詳しく紹介されていない。

それ以外扱わないところは興味深い。表紙には堂々と大きな巫女さんの絵があるものの、本の中で巫女さんについての内容は殆どない。巫女神楽が神楽の種類をリストアップする表に現れることと、神職の説明のところで巫女さんには資格は不要だと指摘するぐらいだ。これは妥当だと思える。巫女さんが神道の象徴になったとはいえ、神道の内容には重要な位置を占めないからだ。

最後の点はちょっと面白い。ヤマトタケルを紹介する内容はない。神話の紹介が神武天皇で終わるし、神様として紹介しないことにしたようだ。しかし、オトタチバナヒメを神様の一柱として紹介する。紙幅の問題でヤマトタケルを省略してもいいが、一人でオトタチバナヒメを紹介するのはちょっと不思議。もしかして、もともとヤマトタケルの神話も紹介するつもりだったが、結局省いただろう。

分かりやすくて優しい神道の歴史の概要を求める人には、この本はいいかもしれない。そして、他の神道の紹介にも大きな誤りはないと思うので、重要な誤解に落ちない。それは、よく考えれば、入門書の役割を果たすという。


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