大石神社

大石{おおいし}神社は長津田駅に近く鎮座する神社だ。神職が駐在しないが、境内は広くて、手水舎もちゃんと整備される。そして、拝殿の隣にかなり詳しい案内板がある。

絵馬や咲いている梅の後ろに神社の本殿案内板によると、この神社のご祭神は在原業平朝臣{ありわらのなりひらあそん}だそうだが、ご神体は自然な楕円石だとも書いてある。それに、現在ご神体が四角の台石に嵌め込まれて、見える部分の高さは1.35メートルで、一番広いところの幅は1.1メートルだそうだ。神社の名称の由来はご神体にあると推測するが、このような素朴な説明には問題がある場合もあるので、ちょっと慎重に。少なくとも、大石神社のご神体は大石だ。本物を拝見できるわけはないし、写真なども勿論ないが、これほど詳しくご神体のことを書くのはかなり珍しい。案内板によると、石の表面には文字や彫刻などは一切ないそうだから、よく言われる神道の原型に近いと言えよう。神社の発祥は未詳だそうだから、遥か昔、自然石が崇敬の対象となって、後世が在原業平朝臣の伝説を付けたと思ってもいいだろう。ただ、如何に説得力がある話だとしても、平安時代から在原業平朝臣を祀って、明治時代に神社の呼称に因んで最近発見された石をそれまでの仏像のご神体の代わりに鎮座された可能性さえ否めない。このような経緯について推測すれば、本当に慎重にしたほうがいい。(フィクションを作成する場合を除けば。)

そして、本殿は蔵造りで、瓦葺きだ。要するに、溝口神社の本殿に似ている。神社建築についての本で、神社には瓦葺きしないと書いてあるが、この周辺の神社に限ったら、ちっとも珍しくない。それは、この地方の習慣か、神社建築の一般論が間違っているか分からないが、少なくともまた神道があらゆる範疇からはみ出る現象を実感させる事実だ。

境内には小さな稲荷神社も鎮座するし、表参道の急な石段の下と上には石造で大きな鳥居が立つので、まだ周りの人たちに支えられた神社なのようだ。ただし、雰囲気はまあまあだった。確かに境内に隣接する建物もあったが、それが原因になるか分からない。私にとって、神社での直感は面白い。何でこうなるか分からないからだ。


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