『延喜式大祓詞』と『中臣祓』〜神道を知る講座VII〜第四回

國學院大學のオープンカレッジの神道を知る講座が続く。今日、大祓詞についての講義で、岡田先生が担当した。岡田先生によると、この講座で受講生が熱心に聞くので楽しいそうだが、もしかして大学の学生が熱心に聞かないという意味だろう。私の大学の時代を思い出したら、可能性があることは否めない。

最初に岡田先生が神道の災害への対応に触れた。岡田先生によると、祭祀などで自然への感謝の気持ちに重点を置いて、災害に対する祝詞や祈りを研究から抜けたそうだ。しかし、東日本大震災の後で、岡田先生がこの課題について研究を始めて、特に疫病への対応が重要な役割を担ったことが明らかになったそうだ。それに、貞観時代の震災の対応を調べたら、東日本大震災の対応と似ている点は少なくないそうだ。(貞観期の震災は、千年以上前に同じような大規模な津波が東北を襲った震災だ。犠牲者は千人だったが、当時の日本の総合人口は300万人だったので、割合として今年の大震災と比する規模だった。)当時の天皇が慰霊と義援に努めて、天皇自らが行かれたように派遣された使いに命じたそうだ。それに、伊勢の神宮へ奉幣したが、その時の祝詞の中で文献上初めて「神国」という表現が現れるそうだ。貞観期から大陸の文化を真似ることを止めて、日本独特の文化が展開し始めたそうだから、画期的なことだっただろう。

そして、大祓詞自体についての説明に入った。先ずは、祓いと言うのは、罪と穢れを祓い清める儀式であるのはいうまでもないだろう。大祓というのは、公的な祓いを指すそうだ。飛鳥時代晩期から行われ、6月12月の晦日に宮廷の朱雀門の前で人が集まり、祓えたようだ。臨時の大祓もあったそうだが、文献上最初の記録は、日本書紀に676年の条にあるそうだ。これは臨時の大祓だから、文献上の初の恒例大祓は702年12月だが、この条によると702年12月の大祓は行われなかった。それを書く必要があるとしたら、やはりその前に導入されたので、大宝律令のなかで定められたのではないかと岡田先生が言った。

大祓詞は、約900時からなって、戦前に暗唱した人は多かったそうだが、最近少なくなった。國學院大學で祭式の前に輪番で学生が唱えるそうだが、神道学部の学生であれば暗唱するのは普通だが、岡田先生によると学生には内容が分からないそうだ。確かに分かりにくいので、今日の講義でちょっと解釈してくれた。

先ず、延喜式に載っている大祓詞の冒頭に、現在唱えられない序文がある。この序文が大祓の為に集まった人たちに大祓の目的を発表するので、現在使われた場所には相応しくない。

それから、かなり有名な「高天{たかま}{はら}神留{かむづま}{}す」の部分が続く。ここで、皇祖神の男神と女神が出てくるが、名前はないので様々な説があるそうだ。女神は天照大神である説はもちろん有力だが、男神を高御産霊神にする説も一般だそうだ。しかし、女神を神産霊神にする説もあるそうだ。祝詞の主旨は、天孫降臨について論じる場合、この神が二人で決めることではなく、日本中から八百万の神を集めて、一緒に決めたことだそうだ。だから、高天原は日本の切断された所ではなく、よく通じるところとして描かれる。

そして、大和の国に天皇の大きな宮殿を作ることも語る。元々、その宮殿の前に読まれた祝詞だから、相応しいだろう。(これは、私の感想だ。)ところで、岡田先生が「やまと」の語源について、「山跡」、つまり「三輪山の麓」という意味だった説を紹介した。この説は、大和朝廷が三輪山の周辺で発生したと示唆するが、定かではないとはいえ、根拠は全くないでもない。

次に天つ罪と国つ罪を紹介する。ここに、延喜式で具体的な例が列挙されるが、現在この例を読まない。岡田先生によると、その理由は、神社で「獣を犯す」などの言葉を言ってはいけないからだそうだ。天つ罪を見たら、二つの要素がある。一つは、記紀神話で高天原でスサノヲが犯した罪だ。もう一つは、農業を妨害する罪だ。折口氏の説は、元々雨障という漢字で、梅雨の季節に犯す罪と言う意味だったそうだ。それは正しいかどうか、岡田先生も疑うそうだが、少なくとも共同体に死活を決める農業との関係は明らかだ。国つ罪と言えば、五つに別けられる。先ず、人に怪我をもたらすことだ。そして、疫病を患うことだ。三つ目は、禁断する性的な関係だ。(ここで「獣を犯す」と書いてある。)四つ目は、災いだ。そして、五つ目は、呪をすることだ。ここで、現在罪として考えないことが入っている。特に、疫病を患うことは、罪ではないと思われる。だが、古代日本で疫病は何の災いより怖かったそうだから、それに触れる人を問題視するのは当然だったそうだ。

最後の方を詳しく説明する余裕はなかったが、登場する祓え戸の神についてちょっと語ってくれた。この四柱がほかの古典に登場しないそうだから、ちょっと謎めいた神様だそうだ。

大祓詞はやはり神道で中心的な役割を果たすので、今日の講義が大変勉強になった。私も、大祓詞を暗記したほうがいいかなとさえ思ってきた。


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