現在の日本には、二つの財政問題が指摘される。一つは、膨大な債務を抱えることだ。もう一つは、不況の中であることだ。債務を減らす為に税率を引き上げて、歳出を削減するのは合理的な政策だが、不況の最中にさらに経済を冷やして恐慌を引き起こす警鐘が鳴らされる。それより、今歳出を増やして経済を刺激して、そして経済成長がもたらす税収で債務を減らす政策を提供する人がいる。確かに不合理ではないので、現実味があるかどうか調べてみたいと思う。
先ずは、日本の粗債務が900兆円程度であるが、債権を差し引いた純債務は400兆円程度に止まる。純債務の方が重要だそうだから、それから試算する。そして、日本の国内総生産を年間500兆円にして、現在の税収を50兆円で、歳出を100兆円にする。詳細が異なるが、この試算はそもそもアバウトな試算だから、これでもいい。
刺激を100兆円にしよう。そして、増税も歳出削減もしないことを前提にする。結果として、刺激の翌年度から税収の成長率が5%になることにする。歳出には変化はないことにもする。5%の成長率は高いが、完全に無理ではないだろう。楽観的な視野の結果を最初に見る。それでも無理であれば、無理だ。それで大丈夫なら、どのぐらい楽観的な予算であるかを調べる。
では、刺激と普通の歳出で、純債務が一気に550兆円に跳ね上がる。これは元年と言えよう。
| 年度 | 税収 | 純債務 |
|---|---|---|
| 元 | 50 | 550 |
| 2 | 52.5 | 597.5 |
| 3 | 55.1 | 642.4 |
| 4 | 57.9 | 634.5 |
| 5 | 60.8 | 673.7 |
| 6 | 63.8 | 709.9 |
| 7 | 67.0 | 742.9 |
| 8 | 70.4 | 772.5 |
| 9 | 73.9 | 798.7 |
| 10 | 77.6 | 821.1 |
| 11 | 81.4 | 839.7 |
| 12 | 85.5 | 854.1 |
| 13 | 89.8 | 864.4 |
| 14 | 94.3 | 870.1 |
| 15 | 99.0 | 871.1 |
| 16 | 103.9 | 867.1 |
こうすれば、刺激を仮に平成25年度の予算にしたら、平成40年にやっと赤字財政を脱出して、870兆円を超えた純債務がいよいよ減少に転じる。しかし、この試算で平成40年の国内総生産は1000兆円程度だから、最後の債務が国内総生産を下回る。途中で国内総生産の110%を超えるところがあるが、それはギリシアのような状態だ。それに、楽観的な5%の成長率が15年間続く予測は極めて楽観的だ。
これを考えれば、この方法だけで財政の問題は解決できないようだ。途中で深刻な危機に陥る可能性は極めて高いし、全く無効になる可能性もある。つまり、増税と削減をも視野に入れるべきだと思う。
コメント
“財政の試算” への4件のフィードバック
経済学は苦手で、また、そもそも、経済学者が経済の処方箋について見解が一致していないので、何とも言えないところなのですが・・・・
歳出削減は絶対必要で、どこを削るか問題になります。英語の記事を読んでいると、福祉の削減や警官の人員削減などで、苦情がでている。これはもっともな苦情だろう、と思います。
私は、議員定数、議員歳費、政党助成費、それに、官僚の天下り団体の廃止など、を真っ先にやるべきだと考えています。
馬鹿な議員が多いし、天下り団体も有害無益、さらにこれをやらなければ、なによりも、国民が増税について納得しないのではないか、と思う。国民に負担を強いて、自分たちは温々と生活している、というのでは、国民を説得することはできない。
さらに、
というのですから、公務員の人件費もカットも止む得ないでしょう。もっともこれも、公務員の組合が強力な党票田になっていますから、できるか、どうか。
議員・官僚・公務員など、自分たちが大胆に身を削れば、増税に関して、国民はわりに納得するのではないか、と思います。
復興増税に関しては
というのは一応筋が通っている、とも思うのですが、
復興増税はやむなし、とした上で、
とも言われている。
復興増税については、議論があるところなのかもしれませんが、いずれにせよ、消費税引き上げを含む本格的な増税はいずれ避けられないでしょう。
そして、増税よりも前に、あるいは、同時進行で制度変革していかなくてはならない。
旧来の制度には根本的に歪みが生じており、既得権益を維持しようとする勢力を打破して、政治構造、社会制度を抜本的に変革していかなければ、あの大震災以上の打撃をうけるであろうにもかかわらず、改革が全く進まない。マスコミもくだらんことで騒いでばかりいる。
近所のおばちゃんと愚痴を言い合っています。
@空様、いつもありがとうございます。
確かに或る程度増税しても経済の冷え込みと繋がらないでしょうね。しかし、エコノミストの予測がよく外れるので、慎重に論議するべきだと思わざるを得ません。
一方、国会議員の減数などには効果はあまりないでしょう。今は700人程度ですし、年収は2000万円です。ゼロにしても、140億円に過ぎません。必要の50兆円の千分の一でもありません。象徴的な行為として有意義でしょうが、直接の効果は期待できません。
天下り団体の問題ですが、廃止することも難しいと予想します。イギリスで同じことを実現しましたが、結果として出費になって、問題を起こしたばかいだそうです。なぜなら、必要な機能は全くない団体は少ないからです。機能なりに費用は多過ぎる場合はあるかもしれませんが、廃止したら、その機能を担う機関を設置しないと行けません。
それに、多くの人の収入を減らしたら、公務員にせよ、会社員にせよ、個人の消費が冷えてしまいますので、経済に悪影響を与えます。
無人島への架け橋のような明らかな無駄遣いでさえ、その費用で雇用される人は少なくありませんので、凍結すれば失業者が発生します。
試算を考えたら、削減も増税も必要だと思いますが、なかなか難しい問題であることを実感してきました。
なるほど。
これはおっしゃるとおりですね。
ただ、私は、象徴的な行為がないと、国民が増税に納得しないのではないか、と思っています。
ここらへんは、実効性のともなう事業仕分けなどをしてもらいたいところです。
同感です。
私の実感としては、国民は新しい何かを求めている。にもかかわらず、政治や政治報道がそれにおっついていない。
イギリスの暴動やアメリカのウォールストリート占拠デモなども、そうした亀裂のあらわれではないか、と思うのです。
私も同感です。革命にならない方がいいと思いますが、抜本的な改革が求められていますね。