『神社本廳規程類集』

神道の研究で最近『神社本廳規程類集』(平成21年版)を読んだ。この本が神社本庁の規程などを集める書籍だから、面白いストーリーなどは全くないし、帳簿や伝票の書式についての規程も多い。それに、ページ数は511だし、文字のサイズも小さい方だから、読むにはかなり時間がかかった。しかし、つまらないかというと、そうではない。

なぜなら、神社神道の現在を把握する為に、重要な端緒になるからだ。もちろん、規程の通りしないところもあると思われるが、規程を見たら、神社本稿が目指す神社神道の形が見えてくる。まとめたら、以下の通りの点に気づいた。

先ず、信仰の内容が規程の対象にならない。神職の養成講座を受ける為には神道の信者である必要はないし、神職になる為に信者であることが条件になるとしても、それをチェックするためにただ誓書を求めることに止まる。誓書で「神社神道の信者だ」ぐらい書いたらいいようだ。他方、祭祀の形が細かく規程で定められる。何も信じてもかまわないが、祭祀をこの統一な形で執り行わなければならないようだ。とはいえ、祭祀の規程には但し書きがあり、但し書きで「神社には慣習があれば、それに従いを得」のような表現がある。だから、統一性は完璧ではないのだ。

神職の養成についての規程で、学ぶべき科目はもちろん指定される。古事記、日本書紀、祝詞、神道の歴史、祭祀の作法など驚くほどはない内容だ。超自然なことを勉強しないことも、神社界に接したらびっくりしない。興味のある点は、社家の家柄を持てば、優遇の対象になることだ。神職の資格を普通より早く得る為の手法があるが、その手法を使う為に条件を満たさなければならない。社家の跡継ぎであれば、そのことで満たすので、神社本庁が宮司の踏襲を認めて、支持することも分かる。

ところで、神職の資格を得るために、養成講座の道も、試験の道もある。前に読んだ神道事典で、だれでも試験を受けることができると書いてあるが、事実上そうではない。神職の資格には五階があるが、一番上の浄階は名誉の資格だから、普段に上から明階、正階、権正階、直階だ。明階の資格の試験を受ける為に、正階を持つことは条件だ。正階の試験のために、権正階は必要ですし、権正階の試験の為に、直階を有しなければならない。しかし、直階の試験はないそうだ。直階を得る為に、養成講座を受けるしかないし、養成講座を受講する為に神社庁長の推薦は必要だ。だから、階段を登り始める為に推薦は必要だ。

また、表彰などの規程から分かることは、神社本庁が高齢者を尊重することだ。表彰を得る為に、60歳を超える条件がある場合もあるし、長年続いて神社に奉仕することも基準になる。もちろん、これは悪くないが、神社本庁の保守的な態度を表すだろう。

最後に、伊勢の神宮の崇敬が神社本庁の規程に指定されていることだ。神宮大麻の頒布の義務も、いい成績に対するご褒美も規程にある。伊勢の神宮は本当に一番上の神社であるかと疑う人もいるようだが、神宮は尊敬高い神社であることを否む人は、神社神道にはいないだろう。だが、神社本庁の神宮を本宗として崇めることを変えるために、わざわざ規程を改正しなければならないので、神宮にたいして不敬に見える。出雲大社を神宮と並列に並んでもいいと思う人でも、わざわざ神宮を軽蔑するような行為を行うことに反対するだろう。神社本庁の設立の時に、この結果を期待して規程を定めたのではないかと思う。

つまり、この本を読むのは長かったが、大変勉強になった。神社神道にとても深い興味を持てば、目次を見ながらひいたらいいと思う。


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