この本は神社検定の公式テキスト①。検定の参級のためのテキストだから、もちろん入門書だ。この二つの性質、つまり検定の公式テキストかつ入門書であることを考えたら、内容はだれも認める基礎知識に限ることは当然のことだ。確かに、読めば反論したい点もないし、そして目新しい情報もほとんどない。(新嘗祭は皇居の中の神嘉殿というところで執り行われるぐらいだっただろう。)本を買う前に検定の参級の例問題を見たら、すぐに答えられたので、これも予想の通りだった。復習になったので、その側面から考えたら役に立ったともいえるが、興味があったのは別の点だった。
検定の課題になる神道文化は本当に奥深いだ。統一性や均一性は乏しい神道なので、どこの神社にも興味のある特殊神事や慣習があると言えるほどだ。そして、歴史的に神道の思想の展開を見たら、根本的に変わったこともある。したがって、神道を紹介する観点を考えたら、様々だ。例えば、歴史の立場から紹介する本は少なくないし、神話を中心として紹介する本も多い。神田明神が発行した『巫女さん入門』が実践を入り口とした。そして、立場を共有しても、入門書に入り切れない疑えない内容がある。だから、入門書の特徴は、内容の選択にある。そのため、テキストに選ばれた内容に興味を持った。何を選ばれたか。
最初に言っておかなければならないことは、公式テキスト②は、『神話のおへそ』と題して、神話を紹介するので、このテキストには神話を詳しく扱わないのに、計画で神話を重視した。では、このテキストに選ばれた内容は何だろう。
一つの重点は、実践だと言えよう。参拝の正式作法や神棚などについての内容は多い。普通の参拝の作法をいちいちに紹介するし、正式参拝の作法や玉串を奉るときの作法も写真付きで説明される。それに、神社の境内にある建造物などの役割を丁寧に紹介する部分も紙幅を占める。目標を考えれば、この本を読んだ人が自信を持って神社にお参りして、そして祈願祭を依頼することができるような知識を与える。学問的なアプローチではない。
ところで、神道の葬式についての情報の多さが目立つ。葬式についての紙幅は、7ページに及ぶのに対して、神前結婚式は2ページに止まる。葬式はそもそも神道と縁は遠いので、重点を置くのはちょっと不思議に思う。一つのヒントは、葬式の情報は祭りの章ではなく、家庭祭りや神棚の章にあることだろう。つまり、祖先崇拝の紹介の後に載っている。ほかの本にも同じように葬式を重視する傾向を見たが、敬神崇祖の後半に関わるのだろう。
そして、一章で重要な信仰、例えば八幡や稲荷を紹介する。選ばれた信仰は基本的に全国に多くの神社を持つ信仰だが、例外もある。例えば、三島信仰は國學院大學の調査によると13番だが、載っていない。一方、出雲大社、熱田神宮と松尾大社は國學院大學のリストに現れないのに、載っている。熱田神宮は三種の神器の一つの草薙剣を祀ることから選ばれたと思うし、出雲大社は神話で大変重要で、そして全国に祀られる大国主神の主な神社であるから選ばれただろうが、松尾大社の理由はまだ私に不明だ。重要な神社であることは否めないので、選んでも差し支えない状態だったが、大神神社もそうだが、載っていない。編集者には縁があるのだろうか。
それに、伊勢の神宮について特別な数ページの章もあるし、皇室祭祀も詳しく紹介される。この方針は、神社本庁監修の本で不思議ではない。神宮を本宗として奉賛する神社本庁であるので、神宮を特別に扱わないわけにはいかない。そして、皇室を神道の中心に見据えることも、神社本庁の特徴だ。
本に余り触れられないこともある。それは、神道の歴史だ。信仰の章で神仏習合を紹介したり、信仰の歴史に触れるし、最後の4ページに一宮制度などや、明治維新からの制度の説明が載っているが、歴史は焦点ではない。弐級の検定には重要になるだろう。
包括に考えたら、この本の方針を見極められると思う。先ずは、人が実に神社にお参りして、お祭りに参加することを支援することは基本だと思う。神社にお参りする時に必要となる情報を丁寧に紹介するし、人生の祭祀についても詳しい。そして、神社本庁の神道観念を広めるために、皇室の役割や伊勢の神宮の位置を主張する。内容の選択の方針には反論できないが、この本が神道の客観的な事実よりも神社本庁の神道観念を紹介することは、忘れてはいけない。
この本は、もちろん検定を受検する人にお勧めだ。受検する前に検定の内容が分かったほうがいいのはいうまでもない。それに、受検するつもりはなくても、神社本庁の神道観念と一般の神社作法や祭りの情報は、よくまとまった形で学びたい人にもお勧めだ。