「神」、「god」と「deity」

ちょっと遅れたが、先日「神」の英訳として「god」と「deity」は相応しくないか説明したいと思う。

先ずは、「god」。ここで、問題は推測に難くないと思う。英語圏の大半はつい最近までキリスト教圏だったので、「god」はキリスト教のゴッドに使われた。キリスト教のゴッドは、一神教の唯一不二の存在で、万能だ。宇宙を創造したし、完璧で罪などを一切起こさない存在だ。人間との共通性は一切ない。(それは、キリスト教で人間でもあるのに、共通性は一切ない。キリスト教の神学には非合理なところもある。)神道の神は、まず八百万だし、万能ではないし、宇宙を創造しなかった。神になった人間も少なくないし、スサノヲの尊のように悪党になった神も充分いる。そして、キリスト教で、ゴッドの命令に従って生きるべきだと言われるが、神道ではそうではない。神を崇敬しても、その神の公道を自分の模範としてとらえるとは限らない。

だから、「神」を「god」として訳すれば、大きな誤解を招きます。

「deity」はそれほど問題ではない。多神教の古代ギリシアの神話に出てくる存在についても使われているので、「god」よりいい選択肢だ。しかし、「deity」は、この世と離れて存在すると思われる。この世と密接な関係はない。だから、天照大神を「deity」と呼んでも、大きな問題はないだろう。しかし、国神を考えれば、問題になる。滝や山と密接な関係を持つ存在は「deity」ではない。この場合、英語で「spirit」という場合もあるが、「spirit」がちょっと天照大神の概念と外れる。

だから、既存の英語で、「神」の訳になる言葉は存在しない。故に、「kami」をそのままで英語として使ったほうがいいと思う。


投稿日

カテゴリー:

,

投稿者:

タグ: