今日、訪日しているダライ・ラマ法王14世が国会議員向けの初講演会を参院議員会館で行った。私が準備にちょっと手伝わせていただいたので、後援会に招待も頂いた。もちろん、このような機会を見逃すわけにはいかないので、参加した。招待のメールで、「撮影は自由です」と書いてあったので、かなりの写真を撮った。国会議員向けの講演で、私が片隅に座らせていただいたのは言うまでもないので、上手くできた写真は少なかった。一番良くできた例を載せる。
では、講演の内容について書こう。冒頭挨拶で、民主党有志代表の牧野議員と安倍自民党総裁が立った。安倍氏がダライ・ラマから友情を象徴する白いスカーフをもらったが、マスコミのカメラが急に激しくなった。ダライ・ラマの講演自体は英語で行われ、逐次通訳で日本語にされた。だから、私が先ず英語で、続いて日本語で聞くことができました。ところで、当たり前だが、通訳者は素晴らしかった。ダライ・ラマが通訳の間にちょっと長く発表したが、通訳が順番を変えたことはあったものの、内容をきちんと日本語で伝えた。ただし、ダライ・ラマの冗談は、本人が言ったほうが面白かった。
講演が三つに分かれた。まず、人間としての使命、そして仏教徒としての使命、最後にチベット人としての使命だった。これから、記憶に基づいて書くので、私も順番を混乱すると思うので、先にお詫び申し上げる。
人間の立場から、ダライ・ラマの主張は、人間は皆基本的に同じであることだった。特に日本人とチベット人の顔立ちが似ている、と。だれでも自由に幸せを求める権利を持つし、それを支えるべきだと述べた。もし、「私たち」と「彼ら」の間に塀を作ったら、「彼ら」を滅んで「私たち」の勝ちを目指すことになると戒めて、そうではなく、人間は皆大きな「私たち」に入れるべきだと主張した。今まで相違点に拘り過ぎて、様々な紛争を起こしたと言って、それが自分の損害にもなると説明した。人間は社会的な動物で、個人の成長や幸せが他人に依ると述べた。だから、他人に嘘をついたり、暴力を振ったりすれば、自分にも損害がくるという。一方、真摯に他人に思いやれば、他人の幸せを支えれば、自分の精神的な安心も、本当に自己自身も培うと促した。正直に、透明的にすれば、信頼感が増し、本当の友達を作ることはできるとも。これは、人間にとって必要な行動だと主張した。
そして、仏教徒として、仏教徒であれば仏教に執着しないように戒めた。宗教は、ダライ・ラマによると、基本的に愛と慈悲を促す存在だそうだが、史上戦争や弾圧の原因になったので、それは悲しい事実だそうだ。宗教が哲学的に大きく異なるが、それはいいことで、それより必要なことだと言った。なぜなら、人間はそれぞれで、一つの宗教が誰にも向く筈はないからだと主張した。だから、宗教の間の相互尊重は必須で、それがあれば人間の成長に貢献すると述べた。そして、人間には素晴らしい知性があるが、それを充分使わないとも言った。感情に振り回され、破壊的な行動に展開することがあると指摘して、知性を駆使すれば、破壊的な感情を抑制して、友愛などの絆を強める感情を育むこともできると促進した。知性の重要性を強く述べた。
最後に、チベット人としての主張だった。先ず、環境問題に触れて、中国人の科学者がチベット高原を、南極と北極に加えて「第三極」と呼ぶことを紹介した。(実は、最近科学者一般に広がっている呼び名になっているようだ。)そして、このチベット高原から源泉を取る河川は、アジアの10億人の生活を支えることも説明した。あいにく、日本の河川とは無関係だとも認めたけれども。だから、チベットの環境を守ることは、600万人のチベット人のためだけではなく、多くのアジア人のためになるとも主張した。そして、チベットの仏教の文化の重要性も強調した。この言語と文化が保っても、チベットが中国から独立する必要性はないと主張して、中国政府の弾圧が間違った前提に基づくことを示唆した。チベットの仏教の文化が世界中に評価され、喪失するわけにはいかない存在であることも強調した。最後に、政治と直接関わる発言を控えた。「政治から完全に隠退したので、それなのに政治に関与したら正直な行動ではない」と説明した。
その後、ちょっと後書きとして、出席した国会議員の間に女性は多かったことを嬉しく思うと言って、ヨーロッパ連合の議会に講演したときもそうだったので、嬉しかったが、女性議員の間には美人もあったので、それも嬉しかったとも言った。(ここで通訳が「魅力のある女性」としたが、英語から考えたら「美人」の意味だった。ダライ・ラマではないと言わない方がいいだろうね。)でも、主張は、男女平等の必要性で、日本で進んでいる状態を讃えることだった。
質疑の時間が短くなったので、一つしかなかったが、英語で聞かれ、「議員には何ができるか」とのことで、ダライ・ラマの答えは「チベットへ訪問してください。地方から中央へ状況が正確に伝わっていないと思うが、外国人の議員、科学者、記者が訪問すれば、中国政府の高官が事実を把握するだろう」と述べた。
ほぼ一時間の講演だったので、これは全ての内容ではなかったが、主要な点は上記の通りだったろう。聞いたら、ダライ・ラマには智慧の評判がある理由をよく分かった。言うことには智慧が溢れるからだ。もちろん、一般的な講演で深い問題と取り組むことはできないので、どうやって実現するかは明らかにされていないが、目標として、そして方針として、賛同できることばかりだ。出席した国会議員が皆ダライ・ラマの言う通りにしようとしたら、日本再生とすぐにつながるだろう。あいにく、中国と間接的に対立する為の道具として使う可能性はまだまだ高い。
この機会を得たことは、本当に有難いことだ。この場を借りて、もう一度お礼申し上げたいと思う。