『神社と神様スッキリわかる!』

この本は文庫本で、神道の入門書である。文庫本だから、大きく6章からなっているが、各章が二ページ程度の数項に分けられた。それは、駅と駅の間で一つの区切りまで読める為だそうだ。この本の章を列挙すれば、「神社の起源と建物」、「参拝の仕方」、「神様の素顔」、「神社信仰」、「神主さんや祭祀」、そして「神道」だ。紹介された内容は、私が知っている限り、全部正しいので、信頼できる本だ。作者の三橋健氏の知識は疑えない。

しかし、この本を入門書として薦めることはできない。理由は、体系性が欠けていることだ。神社や神様が分かる為に、枠が必要になる。事実と事実の間の関係は重要だから、その関係を指摘するべきだ。この本で、事実がただ積み重ねられるといえよう。そして、かなり専門的な内容も載る。例えば、「神」の語源についての項で、古代の発音で「み」には甲音と乙音があったことを紹介して、「神」は乙だったが、「上」は甲だったので、関係はないという。このポイントは興味深いが、神道の入門の一部ではないと思う。そして、神道の歴史の流れを把握するのは、この本に基づいて難しいだろう。必要な情報が点在するが、歴史の話に纏められない。

つまり、先日紹介した『プレステップ 神道学』などの本を先に読んだら、この本で正しい情報を得て、知識をより豊富にできる。一方、この本だけで、神社や神様が本当の意味で分かるとは言えないだろう。

この書評は厳しいだろう。でも、内容は確実で、興味のある点は少なくない。例えば、「神社信仰」の章で、主な神社の信仰、例えば八幡信仰や稲荷信仰が紹介されるので、日本の神社の本質がより明らかになる。体系的な本の補足として読めば、価値が充分ある。しかし、全体像は見え難いので、入門書として薦められない。


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