この本は、神社検定の公式テキスト④で、主に伊勢の神宮の
神宮の式年遷宮は神道の祭祀の中で重要な地位を占めるのは否めない。私の見解で、他の神社と一線を画すほど格別ではないが、一つの祭りとして、一番重要な祭祀だと言えるだろう。そのため、神道の知識の重要な一部になるが、神道の基礎知識には必要であるかどうかは明らかではない。個人的に言えば、学びたいけれども、
一言で言えば、よいと思う。遷宮の説明は丁寧で、かなり詳しい。写真も多く載っていますので、遷宮の諸祭祀の風景がわかるし、説明で歴史や意義も分かる。遷宮の他、神宮の年中行事の紹介も含まれているし、神宮以外の神社を紹介する本の第二章は短いが、出雲大社、
この本を読んだら、印象に残ったことがあった。その三つは、下記の通りである。
まずは、式年遷宮の素晴らしさだ。祭儀は多く、そして夜中に行われる祭祀も、秘密に執り行われる祭儀も、沢山の人の参加のもとで行われる行事も、多種多様だ。このように七年続く祭祀で、遷宮の意味深さが強調され、神宮の威儀も宣揚されると思う。祭祀の厳粛な執り行いも印象的だ。読むだけで参列したくなる。そして、神職はもちろん、童子や童女も参加するので、複数の人には印象的な経験を与える。お木曵きやお白石持ちもそうだ。祭祀の価値が紙面からも感じられる。
そして、遷宮の20年毎の繰り返しがいかに日本の伝統工芸の継続に貢献するかも感じた。現代社会で需要が低下したとはいえ、神宮には必要な工芸は受け継がれる。これは、大変重要な役割だと思う。神宮の社殿や
最後に、神宮が生きている点と関連するが、どれほど変遷してきたかは、ちょっと驚いた。例えば、今回史上初めて内宮と外宮の作業が同一の作業場で行われるそうだ。作業の工程の紹介を読めば、その理由は資源の効率的な使用であると推測できる。同じ木が外宮の材料にも内宮の材料にもなるが、作業場が別々であれば、それは困難だったろう。そして、今回使われるヒノキの量は、前回と比べたら減ったそうだが、社殿の構造などが変わったはずはない。奈良時代から残る資料と今でも同じだ。より効率的に使えるようになったようだ。木材の調達にも変遷が見える。現在の木材は、木曽から調達するが、鎌倉時代まで神宮の神域から調達したそうだし、100年前の大正時代に、今から100年先の遷宮のための木材の準備をしたので、将来にまた伊勢の周辺から木材を整えるようだ。他の変遷の例として、今から時間をちょっと遡れば、昭和28年の第59回の式年遷宮で、初めて全国の住民がお木曵きやお白石持ちに参加できたそうだ。また例を加えたら、江戸時代初期に遷宮を甦らせた時点で、別な年に行われた内宮の遷宮と外宮の遷宮を初めて同一年に行うようになった。
つまり、遷宮の祭祀は太古から相変わらず受け継がれてきたのではなく、時代に合わせて変遷してきたのは事実だ。これこそは生きている伝統だと言えよう。
将来に同じようにまた1300年以上続いてほしい、生きてほしい。