伝統芸能と創作芸能

9月2日付の『神社新報』に「全国こども民俗芸能大会・伝統文化継承フォーラム」からの報告が載る。これは全日本郷土芸能協会が主催するイベントで、全国の伝統芸能を継承する子供達が演奏するし、伝統文化の継承に関わる問題について論じる。

継承することにあたっての問題は、二つあった。一つはもちろん少子高齢化のための後継者問題だ。もうひとつは、創作芸能の位置づけだそうだ。伝統芸能や民俗芸能の保存会は、創作芸能を擁護することはできない。それは当然だ。しかし、伝統芸能に創作の何かを付け加えた場合もあるし、一回創作してから継承させる芸能もあるので、適切な対応は明白ではないそうだ。

確かにそうだ。創作芸能を禁じるべきではないが、民俗芸能や伝統芸能を保存する組織の管轄外のことだ。しかし、伝統芸能の全ては、最初は創作芸能だった。史料から創作の時期や創作者が分かる場合さえある。だから、新しい伝統芸能を認めるべきだが、基準は必要。

たたき台として、私の考えを書かせていただく。伝統芸能になるために、二つの条件は設けたい。

一つは、相変わらず継承することだ。昔のままで演じなければならない。もちろん、思わず微妙な変化を導入するが、それは人間が行うことの上の避けられない現象だ。ただし、方針として昔を形を保存して受け継がせることだ。時代の変遷に伴って余儀なくされた変化も認めなければならないが、なるべく本来の姿を永遠まで持続させることだ。

この条件で、殆どの芸能が「伝統芸能」の定義から離れる。新しい内容を常に入れ替えるからだ。しかし、これは充分ではない。

もう一つは、創作者を知り合った人はもう生きていないことだ。つまり、世代交代が少なくとも二回行ったことだ。創作者が弟子に伝えたし、その弟子がさらに弟子に伝えた。そうであれば、芸能はもう伝統になっていると言えよう。現在の平均寿命を参照すれば、40代で芸能を始める創作者であれば、80歳で亡くなるとしたら、これからさらに70年が経たなければならない。10歳で創作者と接して芸能を身につけた人が70年後なくなるからだ。計算すると、創作から110年が経つことになる。100年以上前に始まった芸能は、「伝統芸能」と呼んでも、異議を言う人はいないだろう。ただし、時間より世代交代のほうが重要だと思う。だから、平均寿命がさらに伸ばせば、定義を修正することになるかもしれない。創作者がまだ生きていれば、弟子の弟子が継承することになる。つまり、創作者と直接に関係を持つ人はもう現役から去ったこと。

伝統芸能に新しい要素を加えれば、原則として同じ基準で判断するべきだと思う。伝統芸能に基づいた新しい芸能であるからだ。

このような基準をはっきりさせたら、伝統芸能の構築を目指すことが可能になる。伝統をさらに豊かにする人が現れることは、期待できる。


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