籤引き選挙

倫理学の論文雑誌で、籤引き選挙を提供する論文を読んだ。論文の主旨は、籤引き選挙は馬鹿な用法ではないということだった。勧めるほどではなかった。考えさせられたので、ここで紹介したいと思う。もちろん、論文の詳細を省略する。論文で見込まれる問題の防止策について論じるが、その一つは籤引き選挙を議員選挙に限ることだった。だから、この投稿で議員選挙の場合のみ考える。

基本的な構造は分かり易い。まず、今と同じように有権者が投票する。そして、候補毎の票数を数える。ここまで今と同じだ。最後に、無作為で当選する候補を選ぶ。ただし、選ばれる確率は、得票の割合とする。つまり、候補が投票の25%を獲得すると、当選する確率が25%になる。5%さえ獲得できない候補は、最終選択から排除される。

全国的に、議員の割合は得票の割合とほぼ同じになるはずだ。そして、選挙区毎にその選挙区の代表となる議員がある。これは重要だと思うが、この投稿でその理由を説明する余裕はない。ちょっとだけで、議員と有権者との絆は重要だが、選挙区への根付きはその絆を作るいい方法だからだ。つまり、全体的に現行の制度と同じ結果が出ると思える。では、籤引き選挙のメリットは何だろう。

まずは、ある候補は、選挙の前でも投票の過半数を獲得することは確実であっても、まだ支持を広げようとするべきだ。選ばれる確率をなるべく高くしたいからだ。51%で、落選する確率はほぼ半分だ。そして、5%しか獲得できない候補でも、さらに支持を得れば、50%に至る可能性はないと言えても、さらに投票を獲得する行動には意味がある。つまり、候補側から見れば、有権者の理解や支持を得る活動を止める理由はいつもない。

有権者の立場から見れば、投票先がさらに自由になる。多数を占めることはできない候補でも、投票すれば当選する確率が高まる。だから、自分の判断の通りに投票する理由はいつもある。これは重要な点だ。民主主義で国民の意見が反映されると言えるが、その前提は投票が意見を反映することだ。現行制度で、選びたい候補には支持率は10%だけであれば、より当選する可能性がある候補に投票した方が良いだろうと言われる。そうしないと、強く反対する候補が当選してしまう可能性がある。

構造的なメリットもある。例えば、或る国には与党の候補と野党の候補が対立することとしよう。ただし、与党の候補は一人で、野党には共通点は多いものの、政策の違いの為に候補は3人になる。そして、結果は与党の候補には28%、野党の候補にはそれぞれ24%になる。現行制度で有権者の72%が反対した与党の候補が当選する。籤引き選挙であれば、野党の候補が選ばれる確率は72%になる。

もう一つのメリットは、全国的に配分されるマイノリティがあるケースだ。マイノリティは6%程度であれば、選挙区に候補を当選させることはできない。ただし、籤引き選挙であれば、全国的に議員の6%程度にマイノリティ候補が当選する。マイノリティには声が与えられるが、これは民主主義の弊害を改善する。

結局は、私の結論は論文と同じだ。籤引き選挙を使うべきだと言い切れないが、使い道を検討した方が良いのではないか。民主主義で、選挙の方法は死活の問題だから、あらゆる側面から検討するべきだ。籤引き選挙は既存の方法と違うが、検討対象から排除するべきではない。


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