成果は出せない研究

昨日のラジオニュースで国家が援助金を出した研究についての報道があった。それによると5年間と20億円をかけた認知症の研究は、成果を出せなくなったそうだ。データ分析を担当する教授の話を聞くと、条件を満たない患者が登録されたからだそうだ。

この話は充分あり得る。報道によると、この研究の目的は認知症の前兆や過程を特定することだったそうだ。そうするために、認知症にまだなっていない人を登録しなければならない。もう認知症を患っていれば、前兆を探すはもう遅いし、過程の一部はもう過ぎ去ったからだ。しかし、5年間で、登録された患者が皆認知症まで発展するわけはない。だから、分析は登録する患者の一部に限る。

その上、前兆が人によって異なる可能性がある。少なくとも、前兆の現れ方が人によって異なるに決まっている。その場合、統計的な分析も必要だし、登録患者のさらに一部に限らなければならない。

統計的な分析を行うために、様々な条件が満たなければならない。例えば、データ源はほぼ無作為で選ばれたこととか、全てのケースは同じグループから出ていることなどは必要だ。場合によって詳細は違うが、このことに気をつけないと結果には意味はないことは多い。

そして、統計的な分析で、有意な結果は必要だ。差が見えるとしても、信憑性は低い場合もある。例えば、日本人の二人を身長を測って、180センチと178センチになったら、日本人の平均身長を179センチであると言えるだろう。この結果は統計的には有意ではない。本当の平均が179センチからほど遠い可能性が残る。この問題を避けるために、測定の件数を増やすしかない。一応100件以上はないと何とも言えないこともあるが、30件を最低限とすることは多い。

だから、300人のうち80人は条件を満たないとすれば、成果が出ない可能性は高い。その80人を外さなければならない。そうすれば、有意な結果を出すためな人数が残らない恐れがある。まず、220人だ。その中、100人が認知症に進んだとしたら、経過を測るために50人ぐらいになる。(なぜなら、その100人のうちに実験の最後の段階で認知症になった人も入っているからだ。)前兆を種類によって分けたら、人数が100人を切ることは多い。だから、結局優位な結果が出ないだろう。ある兆しが本当に認知症の前兆であるかどうかは、判明できなくなる。何も判明できなかったら、成果は出せない。

分析を担当する教授がデータを見てからこういうふうに言ったので、このような問題がある可能性は高い。そうなら、20億円の無駄遣いになってしまう。追加研究を加えるのは極めて難しい。(統計的な分析をするための条件を満つのは難しいからだ。)そうしても、さらに数年間がかかるし、さらに20億円がかかる。残念だが、今の時点何も出来ない可能性は高い。


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