STAP細胞と小保方氏

今のニュースでRIKENの小保方研究ユニットリーダー(以下「小保方氏」にさせてもらう)の研究成果が大きく取り上げられている。それは適切な反応だと思う。ただ弱酸性に晒すことだけで普通の細胞を万能細胞に変更させるのは、何回言われたように画期的な成果である。万能細胞は再生医療に大きな潜在力を持つのは周知の通りだが、実践に移す前の問題はまだ残っている。この成果は、その問題の二つの解決に大きく貢献できそうだ。

一つは、万能細胞の供給である。胎児細胞には倫理的な問題がある。山中教授が発見したiPS細胞の変更率は低いし、数週間がかかる。緊急治療には適応できないだろう。小保方氏の方法の効率は7.5%程度だそうだし、三日間もかからないという。このような結果なら、臨床で万能細胞を作って治療に当てることが可能になる。

もう一つは、万能細胞の安全性だ。iPS細胞を作成するために、特定なタンパク質を細胞に注入しなければならないが、その方法によって細胞に他の変化を齎すことがあるので、がん細胞になる恐れもある。安全性を確認するのは難しい。弱酸性に晒された細胞の場合、外部のタンパク質もないし、タンパク質の遺伝子を組み入れるためのウィルスもない。だからといって安全であるとは言い切れないが、危険を探すところがかなり少なくなった。

もちろん、治療法に当てる方法を研究する必要はまだあるので、すぐに病院に現れないが、潜在力は凄い。この観点から、一つ心配になることがある。それは、新生のマウスの細胞でしか成功していないことだ。確か、数年前のNatureの論文で、新生したマウスには優れる再生力があるような成果が発表されたような気がする。足指を切り取ったら、また生えるということなど。もちろん、大人のマウスや人間の新生児にはこの能力はないので、簡単に人間の細胞に使えない恐れがある。手法を洗練して、効率がちょっと下がった形でも使用できるかもしれないので、期待できるかと思う。今までの成果でも大人のマウスや猿で更新が見えたような報告もあるので、良い兆しだ。

そして、仮に人間の細胞に使えないことになっても、細胞と万能細胞の研究や理解に大きく貢献するに違いない。直接的に治療とつながらなくても、間接的に影響を与えるはずだ。まったく予想されなかった結果だから、波紋が広がるし、研究のこれからの歩みに大きな影響を与える。RIKENの報告によると、小保方氏の目標はここにあるそうだ。

ところで、昨日の朝のNHKのラジオニュースでも、ウェブで見つけたニュースでも、STAP細胞だけではなく、小保方氏本人もよく取り上げられるようだ。例えば、研究室にはムーミンの人形が飾られるとか、趣味は何であるなどの研究と関係のない報道もあった。(ムーミンの人形は研究室にあっても、研究の関与するはずはないよね。)確かに小保方氏の研究室のホームページを見れば、壁色はピンクであっても驚くほどではないが、男性の研究者であったら、このようなことをわざわざ報道するだろうか。

それでも、長期的に考えれば、良いことだと思う。日本で、女性の研究者は比較的に少ないし、若手の研究者の独立した成果も少ないので、若手女性が大変優秀な成果を挙げたことは、模範として良い。本人は暫くの間大変だと思うし、(追記:やはり、大変だそうだ。)研究室に戻ることはこの数日許されないだろうが、すぐに落ち着くのではないかと思う。小保方氏は自分の研究を進めたいと思うし、そうするのは一番だとも思う。(だから、余計に振り回されないで欲しい。)もう金字塔を打ち立てたと言えるので、これを見て女の子が理科系な道を選ぶことも、大学が女性の研究者を採用することも、期待したい。

ただし、今のところ、この偉大な成果の祝辞を差し上げる。