6月に開催された神社本庁や伊勢の神宮に関連する会議で、式年遷宮の広報で関心が高まり、参宮下人数が過去最高の1400万人に上ったことは指摘された。『神社新報』での報告から、ちょっと「驚いたことに参宮者数が増えた」かのような印象を受けた。過去は、誰でも神宮のことがわかるとの思い込みのため、広報する必要はないと判断したようだ。もちろん、誰でも神宮のことが知っているとしても広報はまだ効果的であることは、その業界で経験がある方は皆言えるので、もしかしてそのような話は神社本庁であっただろう。
それはともかく、今の式年遷宮(まだまだ真っ最中だが)の広報に良い結果が認められているようだ。
この事実を考察すれば、神宮だけではなく、他の神社にも貢献できるだろうと思うようになる。神社本庁には広報戦略はあるべきなのではないか。
神社本庁は神社本庁で、神宮が中枢に据えられるのは当たり前だが、他の神社の活気についても考えるので、より広範囲での広報は可能だと言える。
例えば、年中行事のことを考えよう。初詣はもう人気を尽くしているので、神社毎の広報では充分だが、例えば夏越の大祓をより積極的に宣伝すればいかがだろうか。厄払いは、神社でのポスターの宣伝で激増したそうだから、夏越の大祓への参加も増えると思える。そして、初詣からちょうど6ヶ月離れているので、神社の負担に配慮しているとも言える。確かに、夏越の大祓を行わない神社も存在するが、30年前に特に初詣を行わない神社もあったそうだ。初詣の大流行は最近の現象であるそうだから、夏越の大祓を庶民の年間の楽しみに加えることは無理ではない。そして、千年以上の歴史がある行事で、神道の神学に重要な位置を占める「祓」と関わるので、強化活動しても相応しいと言えよう。
その上、神宮の式年遷宮のように、個別の神社の式年祭を広報しても効果があるだろう。春日大社や上賀茂神社と下鴨神社でも式年遷宮に相当する神事もあるので、それを広報したら注目を集めるだろう。そして、諏訪大社の御柱祭や今の『皇室』で取り上げられている香取神宮の式年神幸祭のような式年祭もある。このような祭りは戦略に相応しいと思う。先ずは、重ならないことは多いので、毎年別な祭りや神社に力を注ぐことはできる。そして、文化的な側面も、スペクタクル的な側面もあるので、広く関心を集める可能性はある。
気をつけなければならないことは、受け皿があることだ。神社によって、急に数万人が全国から駆け込んだら受け入れられない場合もあるので、成功が問題にならないように神社を選ばなければならない。
広報戦略で、一般の人を神社の文化と接するようにする。それはもちろん出発点に過ぎないが、その点で多くの人が止まっても問題はない。肯定的な意識を興せば、充分貢献するからだ。