『光に向かって』

この本のサブタイトルは、『3・11で感じた神道のこころ』であるので、東日本大震災で神社や神職がどう対応したかはテーマになっていることがわかるだろうし、『光に向かって』というタイトルから積極的な態度を評価することも窺えるだろう。作者の川村氏が2011年末に東北の被災地を訪れ、複数の神職への取材を行った。それに基づいて、この本を綴った。主に、1章は一つの神社である。体験談が基盤となるので、ここで私の感想を書かせていただく。

まず、この本から絶望的な印象はない。それは、取材に応じた方の性格によると思うが、それでもそれほどな打撃に立ち向かえる方を尊敬するしかない。

その次に感じたのは、災害直後、もう少しボランティアとして貢献できたかという気持ちだった。確かに家族がいるので、気軽に遠くまで行けないが、それでも何かに直接に貢献するべきだったのではないかと感じる。反省する。

そして、同じテーマと関わるが、当事者ではないと、解決策を提案してはいけないとも感じた。相馬中村神社の章で、野馬追の有名な行事を神職が2011年にも開催することを企てたが、近所の人からの反対があった。同じ当事者であったからこそその反対を乗り越えて、実現できたと思う。そとから来て、復興に向けての道を説明したら、当事者の自立性を尊敬していないと思う。もちろん、当事者に呼ばれ、アドバイスを求めらたら、それは別だが、基本的にその当事者が企む企画を具体的に応援するべきだと思う。その観点から、私の支援方法はダメではないと思う。つまり、復興が始めた被災地へ旅して、地元の人の営業などを利用して、楽しむ。そうすれば、地元の人の目指す災害からの復旧への道の歩みを応援することになる。ある程度、自分はその道はある程度間違っていると思っても、応援するべきだ。そうしないと、実際に自分の意見を当事者の判断より優先する。その場の状況がよく分からない自分の意見を優先するのは、不合理でもあろう。

この本は、神道のことをあまり紹介しないが、それは目的ではなかった。それでも、複数の神職さんの性格と危機での活動がわかる。神道の多様性がまた浮き彫りになる。そして、作者は女子神職だからだろうが、女子神職も多い。この本は、神道の入門書ではないが、神道の違う側面へ光を指すので、貴重である。なぜなら、神道の問題と取り組むのではなく、神社人として大震災の社会問題と取り組むからだ。同じように、大震災からの復興に特別な光を指すのではないか。

つまり、この本のご一読をお勧めする。


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