2015年を顧みる

今年は、私にとって、どういう1年間だったろう。先日、生徒さんと今年最後のレッスンで振り返って、漢字の一文字で今年を表そうとしたら、「待」とした。なぜかというと、今年中終わったことは少ないが、進んでいることは多いからだ。つまり、終結を待つことは多い。一番大きな例は帰化申請だろう。3月に受理してもらったが、それ以降何も動きはない。国籍証明の問題が原因だと思うが、法務省がイギリス大使館がもう発行しない書類の代行品を決めない限り、私の申請は進まない。

他も同じようだ。教える仕事が順調に行っているが、終結がある仕事ではない。そう言っても、目指した生徒さんの人数に達したようだから、来年のしばらくの間の生徒募集を控えるだろう。これで、一つできたことがあるだろう。契約などから見れば、Ars Magicaの監督の仕事もそうだったが、実際に来年になっても最後の一冊の校正が待つことになっている。ほぼ納まった状態になっているが、もう少しだ。執筆しているKannagaraも進んできたし、基礎はほぼできたような感じだが、完成した部分はないし、戦略を改正するかどうかも考えている。そして、まだ公表できないが、新しい仕事の話が進んでいるが、それも来年になってから決まる運びだ。来年終結があるはずなことは多いが、何でもかんでももう少しだ。だから、待つ。

では、今年の新年抱負を参照したらどうだろう。やはりだめだ。

  1. まだ完備ではない。それでも、近づいてきた。食品の備蓄は良くなったし、今室内の消化器の購入の検討をしている。これは、一応できたと言えよう。
  2. 上述の通り、まだできていないが、かなり進展した。満足であるとは言えないが、絶望から程遠い。
  3. 着手もしていない。まだやりたいと思うが、他の仕事で忙しく、なかなか進められなかった。
  4. できていない。実は、執筆の仕事をどうするかを考えている。前のようなフリーランスはしない可能性もある。
  5. ある程度できた。まだ改善できる余裕があるが、宿題をチェックすることはある。そして、学校の様子などを見守っている。その上、ダディーデーという仕組みで、月に1回ぐらいのペースで丸一日を二人で遊ぶ習慣ができたので、それは良いことだ。日本舞踊のお稽古は、私はまだ担当しているし。この点の今年は大丈夫。
  6. 忙しくて、あまりできていないのは事実だ。それでも、駅までの徒歩があるので、健康のための散歩はできていると言えよう。
  7. ブログを続けられた。そして、祝詞の計画はまだ途中だが、連載小説を今月載せられた。祝詞は、来年こそやりたいと思う。小説は、昨日の投稿で述べた通り、もう少し日本語の小説を読んでから再挑戦したいと思う。
  8. 別な日に載せた読書の計画だが、超えた。購読する新聞などは完全に読めたし、論文誌も目標をちょっと超えてできた。実は、2014年分に入った。他の本は英語の本だけで百冊を超えたが、日本語の本も二十五冊を超えた。読書は他の仕事の基盤になるので、せめてこれができてよかったと思う。

今年の他の仕事は、川崎市の委員会などで、外国人市民の実態調査のインタビューの報告書の執筆に携わらせていただいたし、別な委員会で外国人市民の政策を評価することに務めさせていただいた。これは当然年度によって区切るので、まだ終わっていないが、きちんと進んでいる。

抱負の結果と他の結果を照り合わせると、やはり今年の比重が執筆から離れたと言えよう。年始の予想と違うが、必ずしも悪いことだとは言えない。来年どうするか、考えたいと思う。

『椿堂』を顧みる

『椿堂』は終わった。当初の予想よりちょっと長くなったが、今年以内収めた。この経験で何を習ったのかな。

まずは、日本語でフィクションを読まなければならないことを痛感した。漫画をある程度読むことがあったし、ドラマも観るので、会話を書くときにどうすれば良いのかは、分かったと言えよう。それも完璧ではないが、セリフの間の日本語は大変だった。登場人物の手振り身振りを描写すること、言い方を説明すること、動作などを描くことは難しかった。いつも同じ言葉を使ってしまって、そして適切な表現であるかどうかはさっぱり分からなかった。このようなことを把握するために、日本語の小説を読むしかない。

そして、ファンタジーの現代の小説は良い。森鴎外や夏目漱石を読めば、明治時代の日本語になってしまうので、変に見える。もう学論的な本を読みすぎて、日本語にそのような影響を受けているので、ライトノベルが良いかもしれない。(それに、気軽に読める作品は良い。重い内容の読書は多いので、楽しいことは欲しいのだ。)読んでいる漫画は文庫本を原作としたので、それは一つの候補だが、ファンタジーで原作は日本語で、名作と思われる本をこのブログの読者が知っていれば、教えていただければと思う。

技術的な側面で足りないことは痛感したし、内容にもちょっと不満を抱く。読者は気付いたかもしれないが、展開は典型的なファンタジィの反対になっている。主人公が周りの社会の規則などに違反すれば、問題が起きてしまうが、それを解決するために規則に忠実するしかない。そして、男女平等が済し崩しされる世界の中だから、一般に認められる動きの逆流だ。もちろん、主人公は女性だから、その流れを止めようとしている。これは、結局指摘したかったことだ。現代社会でも、平等への進化が逆進させられる可能性に配慮しなければならないことと、個人勝手に動くことは必ずしも良くないこと。欧米では常識に反するかもしれないが、日本ではそれほどではなかろう。しかし、このようなことを描写することに成功したかどうかは、心配だ。

登場人物の性格もそうだ。真理安の生活が小説の中で成長するつもりだが、それは見えるかどうかは不安。華多離菜も、真理安のことをどう考えるか、自分のことをどう考えるかは、明らかになっているかどうか分からない。他の登場人物はさらに心配だ。女列安道や恵純理英、頭魔主、羽空、谷入はわかってもらえないだろうと思うしかない。

やはり、書いてすぐに公開することは技術面から考えれば良くない。話のバランスと登場人物の動きを修正したり磨いたりするのは良い。(天才ではない限り。)話の後半はちょっと短くなっているかと思うし、協働の場面は鮮やかに描かれていないのではとも思う。

一方、肯定的に見れば、できた。1ヶ月で37,000文字の小説を書いたし、狙いが見えるかと思える程度になっている。不満な点は多くてとはいえ、できた事実は大きい。やはり、研修の読書をして、再挑戦したいと思う。

椿堂28

真理安が恵純理英について評議員会の議事堂に入った。華多離菜はそのあとついてきた。議事堂は意外と狭くて古かったが、伝統は重かったので改築さえしようとしなかった。入り口で谷入が一瞬止めようとしたが、明らかに考え直した。椿堂の廃堂を審議するのは市井の噂だったので、自分の学堂の件の審議から排除できないことは、谷入でさえ分かったようだった。

議事堂はもういっぱいだった。評議員はもちろんのこと、傍聴する匠も多かった。一般の学生は、空席はないため、入らせられていなかったが、他の学堂と特別な関係を持っていた学生は散見できた。真理安は、評議員に目を向けて、表情から意見を読み取ろうとしたが、敵しか見えなかった。

「準備はできましたね。」

「あ、先生。ようこそいらっしゃいました。」頭を下げて、真理安が女列安道に敬意を表した。

「真理安。華多離菜。期待は裏切られなかった。では、これは勝負。」

真理安は驚いて、何も言えなかった。涙は目から溢れそうになったので、手で拭いて、また評議員を見つめた。

谷入がまた叫びました。

「頭魔主評議員会会長おなり!」

頭魔主が入って、席に着いた。

「ここで、評議員会が女列安道の資格の問題と椿堂の存続の問題を審議します。案は、女列安道の資格の剥奪と椿堂の廃堂です。根拠は、谷入警備長が教えます。警備長。」

「はい、委員長。女列安道が悪魔の牢獄について過失な判断をして・・・」谷入が訴えを始めた。牢獄のことは大きかったが、椿堂の倫理問題も掲げて、そして学歴不振の問題も掲げた。「今年度、椿堂の学生には卒業の免除は一つも出されていません。」

「すみません、委員長。」恵純理英が言い出した。

「はい、恵純理英匠。」

「椿堂の学生の卒業のことですが、ここで記録を持っていますが、234人の内、198人が卒業基準、または中間の基準を満たしましたので、ここで卒業の正式の認証をお求めいたします。」

「その規則は古臭い!」と谷入が言い捨てたが、頭魔主が応じた。

「それはそうですが、今も大学の規則ですので、手続きは正しければ、もちろん認証します。試験を行ったのは誰ですか?」

「私です」と恵純理英が答えた。

「自分で自分の学堂を評価するなんて、稚拙な話じゃないですか?」谷入は軽蔑な声で言った。

「恵純理英先生は匠の資格を持っています」と華多離菜が反論しました。「規則では、匠が判断することしか書かれていません。」

「確かに言うとおりです。」と頭魔主が認めた。「しかし、これは特別な事情です。評議員会で審議しなければなりません。」

「委員長、ちょっとよろしいでしょうか?」羽空だった。

「はい、羽空委員。どうぞ。」

「私は、定型議論の試験現場に立ち会いました。恵純理英匠の判断を検証しましたが、問題はなかったというしかありません。私なら失敗と判断する学生は数人いましたが、逆に私は合格を許す学生を不合格にした場合もありました。匠の判断に任せる範囲を逸脱していませんでした。申請は正常だと思います。」

議事堂は閑静だった。真理安も驚きで何も言えなかった。頭の中で「だから失敗で喜んだのか」と繰り返して考えることしかできなかった。

「そうですか。では、受理します。椿堂の学歴には問題はないと言いましょう。」

「しかし、委員長!」谷入が反発したが、頭魔主の厳しい視線で静かになった。「はい。では、倫理的な問題は充分であるとも思えます。」

「谷入警備長、倫理違反はいつ起こりましたか?」恵純理英からの質問だった。

「一々月日を読み上げるには余計な時間がかかります。」

「一番最近な事件はいつですか?」

「それは、あのう、5ヶ月前です。」

「はい。委員長、過去には倫理的な問題があったことを認めざるを得ませんし、深く反省しております。しかし、この半年で違反はないように、倫理的な刷新を行ってきました。」

「それはもう遅い。」と谷入が言ったが、華多離菜が手を上げて、反論した。

「すみませんが、倫理規定によると、若い学生の勢いに配慮して、倫理違反を廃堂の根拠とするために、学童が改善に努めない見込みも必要とされています。半年で違反をなくした実歴は、改善に努めている証拠になりませんか?」

「それは、ただ女子の隠蔽だろう!」と谷入が怒鳴った。

「それでも、証拠はないんですよね」と羽空が言ったので、谷入が憎みの眼差しで頷いた。

「確かに、最近の証拠はありません。」

「同性愛のこともね。」

「はあ。」

「私の学堂から同性愛をなくすのは、相当な努力は必要だろう。隠すことも難しいです。頭魔主委員長、これは根拠にならないと思います。」

「羽空理事、女性は呪術に向いていないことじゃ常識でしょう。」谷入は怒りを抑えられなくなったようだった。

「一般にそうです。否めない事実です。しかし、ここで一般の話はしていません。ここで、椿堂の話です。椿堂は200人余りに過ぎません。女性の中で、呪術ができる200人が存在することは、それほど信じがたいのでしょうか。」

「はい、はい。この一般的な議論から今回の案件に戻りましょう」と頭魔主が言った。「女列安道の資格の問題ですが、剥奪しない理由はありますか。」

真理安が飛び立った。

「はい、委員長。あります。」

「そうなんですか。では、小娘。説明しなさい。」

「悪魔の牢獄の事件で、被害が広がっていません。その上、警備の問題が明らかになって、改善も図られています。結局のところ、女列安道先生の判断は妥当だったと言えます。」谷入の顔が真っ赤かになっていたので、真理安が次のことに走った。「確かにその判断と同意しない理事もいると存じますが、資格の剥奪にはそれ以上の理由は必要となります。学堂には深刻な問題があったら、それはその理由に当たると言えましょうが、先ほどの話で明らかになっているのは、学堂にはそれほどの問題はないことです。つまり、剥奪に相当する理由は存在していません。規則によると、それは剥奪しない理由になる。」

「頭魔主委員長、この小娘を追い出してください。今は、大学から女子を排除する絶好の機会ですが・・・」

真理安が声を上げた。

「委員長、憲則5条で谷入を訴えます。谷入の即時の解任を請求します。」

「何?」谷入の怒鳴りは凄かった。

「承知しました。」と頭魔主が答えた。「谷入、退室をいただきます。」

「委員長、何ですか?」

「この小娘の憲則の理解は正しいです。女性を排除することは、憲則違反です。憲則違反を提案した役員を即時解任しないと、評議員会の自然解散になる。警備長として、これは知るべきだった。議事堂を出なさい。」

一瞬谷入が反発するかと思ったが、扉を飛ばそうとしながら部屋を出た。

「では、女列安道の資格を剥奪根拠はないようです。同じく、椿堂を廃堂させる根拠もありません。資格停止を取り消します。女列安道大師、椿堂を率いってください。」頭魔主が立って、椿堂の先生と学生が立っていたところに近づいた。

「これから、注意深く行動しなさい。見ているぞ。」

「私たちも、委員長。」

椿堂27

「よくできましたね、お嬢さん。」

「まあ、ありがとうございます。」羽空理事の隣に座ると、試験の本番より緊張感を覚えた真理安は、それ以上の返事はできなかった。そして、試験が続いたので、羽空も静かにした。華多離菜は容易に合格基準をはるかに超えて、羽空の隣に座りに来た。羽空がまた華多離菜の成果を褒めて、試験に集中した。

真理安もそうだったので、しばらく経つと羽空が隣に座っていることをすっかり忘れた。ただ只管教え子の試験を見守った。実力を持った子の出来を楽しみながら見たが、心配していた子が登壇すれば、また自分より増して緊張して、頭で答えをなるべくうるさく考えるようにした。それでも、ダメな学生はダメだった。その失敗ごとに、羽空が頷くことに真理安がやっと気づいて、羽空を見るようになった。学生が合格すると、反応は全くなかったが、失敗ごとに喜びそうな微笑みが顔に湧いてきた。真理安の気持ちがどんどん悪くなって、怒りも心の中で灯されて、燃え上り始めた。羽空は、椿堂の学生の失敗を見るために来たのか、と心で繰り返して言い聞かせたが、試験が続く限り、黙って待った。

傍聴する男子生徒が時間が経つと減っていった。やはり、同じような答えを何回も見るのはつまらなくなるし、女子学生を見ることも飽きていった。試験の間、一人か二人がこっそり退場することで始めたが、半ばに至る前に団体で出ることになっていた。後半に入ると、埋め尽くされた行動がガラガラになって、三人が一緒に座るのは真理安たちだけであるようにもなってきた。それでも、羽空の集中は衰えなかった。最後まで、すべての試験を見守って、失敗たびに喜びの微笑みが垣間見られた。

いよいよ最後の学生が恵純理英の質問に答えて、合格して降壇した。羽空も立ち上がって、恵純理英に会釈してから、真理安と華多離菜にお辞儀した。

「お付き添い、ありがとうございます。勉強になりましたし、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。」

「楽しかったですか?」真理安の声には怒りが聞こえたが羽空はただ笑って、頷いた。

「楽しいところはいっぱいありました。では、これで失礼いたします。」

真理安は呼び止めようとしたが、華多離菜が手を手に乗せて、辞めさせた。

「羽空を敵にするべきではありませんわ。味方ではなくても、敵に回ってもさらに大変ですよ。」とつぶやいた。

真理安は深呼吸を取りながら、自分を落ち着かせた。

「確かに。が、見た?失敗に喜んだぞ。嫌な奴だな。」

「それはそれで。」と華多離菜。「でも、合格率を計算しました。8割を超えましたわ。」

「落ちたな。」

「確かに落ちましたが、他の学堂の中央値を超えますよ。」

真理安が怒りを忘れた。

「っていうのは、廃堂の言い訳になるはずはない。そうだろう?」

恵純理英が講壇から降りて、笑顔で二人を迎えた。

「そうだと思います。自信を持って評議員会に行きましょう。」