椿堂10

夜空で星を隠したり見せたりしながら雲が追いかけて北へ走る。それでも湖の表面は鏡のように動かず、星空を映すが、湖の鏡には雲ひとつもない。真ん中で山が水面から聳えるが、山麓から広がる大学の街はもう島に抑えられず、水の杭を深く刺して、湖を道として形を整える。建物が終わると、湖の水面が壁のように立ち上がって、市街地を廻らせて外からの侵入を塞がる。壁に移された星は、静止せずに魚かのように踊り泳ぐ。時折、顔も見せて、湖を見渡すが、脅威するものは今夜もないので、壁も半分寝ているのだろうと思える。

水塀の中の街で、塔が空に指を伸ばす。学堂の塔も呪師の塔も交えるが、学堂の塔の周りに寮や教室が広がるが、呪師の塔の殆どは直接水面から上がり、入り口も肉眼に見せない。ただ窓から光が漏れて、銀色と金色は多ければ、赤や青、黄色や紫も、虹が風に翻るかのような明かりも点在する。学堂の塔も量も闇に包まれ、学生も先生も休息を取っていると言わんばかりの顔を見せる。それでも所々で夜更かしで宿題や研究を進めようとする努力の証として閉ざされた雨戸などから蝋燭の揺れる灯りが漏れるか魔法で生み出された白くて強い灯りがいたの好きをしっかり描写するところも。

椿堂もその一つだ。とても古い学堂で、島に礎を敷かれた塔は4本山と競うが暗闇の中でさらに暗闇としか思えない塔はさらに高く、さらに強く聳える。塔の麓に中庭が4つ広がるが、その周りに寮や食堂、教室の入った建物が街との交流を遮る。図書室はその真ん中にある。寮などより高いといえども、塔と比較ものもない。屋根は夜中でも正午の青空の色を保って、この空を龍や鳳凰が通り交わすことは見えるが、光を放つことはない。塔から見れば、窓かと思うだろう。図書室の前に建立された時期に正門だったかと思わせる楼門が建つが、今はその向こうには中庭の一つが、湖の上まで延長して、夏が来ると女子がこの隠れた湖で泳いだり遊ぶ。その延長戦を湖の上まで追うたら、囲いの中の船が静か浮かぶ池を通ったら、現在正門の役割を担うもんに辿り着く。

侵入者を拒むかのような窓のない顔を街に向けるが、学堂の内側には石像が椿堂の歴史を飾る偉大な呪師や匠を現役の学生に見せて、励ます。この楼門の中の扉は、学生の頭の上よりさらに上へ聳えて、海洋を渡す船を受け入れる余裕さえあるが、それほど使われていない。日常的な出入り口はその隣の小さな扉で、夜には安全のために鍵がかけられる。

それでも、今見たら扉が開いて、二人が街へ出る。夜中に真理安と華多離菜が学堂を出て、行き先を追う。


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