椿堂23

真理安が華多離菜の制服をもう一回確認したら、華多離菜が真理安の方を正した。

「心の準備はできた?」華多離菜が頷いた。「じゃ、行くぞ。」

真理安が扉に三回優しく叩いた。奥から声が届いた。

「入れ。」

二人が恵純理英の研究室に入って、扉を閉めた。

「お前か。何?」恵純理英の声は何か言ったら疲れていた。

「先生、」真理安が言った。「お話がございますが、よろしいでしょうか?」

「謝罪はもう無駄よ。」

真理安が床を見て、深く息を吸ってからまた先生の目を見て、続いた。

「それはよくわかっております。謝らなければならない事実を痛感致しますが、残されている命が絶えるまでお謝り致しても、過ちを取り戻しもできますまい。虚しい謝罪の代わりに、償いになることは期待出来ることを差し上げたいと存じます。」

しばらくの間、恵純理英が二人を見つめて、黙っていた。

「そうですか。では、聞きます。話してください。」

「椿堂を守ることは可能だと思っております。」

「そうなんですか。あなたたちが守れると思いますか?若者の誇りは苦しいです。もう充分したと思います。もう止めて欲しいのです。この学堂の大師がいなくなってしまった。女列安道先生はもうこの街にいません。どこへ行ったかは、私さえ分かりません。分かった?先生がいても、資格停止である限り、守ることはできないが、いて欲しいのです。」半分叫んで、恵純理英が急に黙って、学生に背いて窓の外を見た。部屋は閑静になった。

「先生、申し訳ございません。卒業の免除が深刻な問題になるのは痛ましく存じます。」真理安が躊躇した声で話し出した。「それでも、救済策がございます。」恵純理英が向かなかったが、背筋を伸ばした。「華多離菜が、華多離菜さんが教えてくださいました。大学の規則には、600年前の基準はまだ有効であることを。」恵純理英が急いで顔を合わせた。

「本当ですか?華多離菜、間違いはないのですね。」

「せ・・・先生。」華多離菜の手が震えて、拳にした。「間違いはございません。」

「数百年前にそのような規則があったのはもちろん知っていますが、もう廃止されたんじゃないの?」

「廃止されていません。」華多離菜の自信が話す次第強くなった。「一昨年、免除の源泉を調べようとしました。大学の記録で追えば、基準の改定から10年以内現れましたが、さらに過去に遡れば同じでございます。ただし、今回、免除の内容が広がりました。基準の一部を免除することがすべての卒業生に及びましたし、そして基準の全てを免除することも表出します。500年前に、誰一人も基準を満たしませんでした。その時点、評議員会の議事録で基準の改定の議論がありますが、改定案は可決されませんでした。廃止案も提案されましたが、採決に至りませんでした。その理由として、基準は存在しなければ、評議員会に免除する権限もなくなるということでした。探しましたが、廃止決議は見つけませんでした。存在しないと確信しています。」

華多離菜が終われば、恵純理英の顔は明るくなっていた。

「本当ですか?その基準、お分かりですか?」

「はい、先生。持ってきました。お見せさせていただけますか?」

「はい、ぜひ。」


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