椿堂27

「よくできましたね、お嬢さん。」

「まあ、ありがとうございます。」羽空理事の隣に座ると、試験の本番より緊張感を覚えた真理安は、それ以上の返事はできなかった。そして、試験が続いたので、羽空も静かにした。華多離菜は容易に合格基準をはるかに超えて、羽空の隣に座りに来た。羽空がまた華多離菜の成果を褒めて、試験に集中した。

真理安もそうだったので、しばらく経つと羽空が隣に座っていることをすっかり忘れた。ただ只管教え子の試験を見守った。実力を持った子の出来を楽しみながら見たが、心配していた子が登壇すれば、また自分より増して緊張して、頭で答えをなるべくうるさく考えるようにした。それでも、ダメな学生はダメだった。その失敗ごとに、羽空が頷くことに真理安がやっと気づいて、羽空を見るようになった。学生が合格すると、反応は全くなかったが、失敗ごとに喜びそうな微笑みが顔に湧いてきた。真理安の気持ちがどんどん悪くなって、怒りも心の中で灯されて、燃え上り始めた。羽空は、椿堂の学生の失敗を見るために来たのか、と心で繰り返して言い聞かせたが、試験が続く限り、黙って待った。

傍聴する男子生徒が時間が経つと減っていった。やはり、同じような答えを何回も見るのはつまらなくなるし、女子学生を見ることも飽きていった。試験の間、一人か二人がこっそり退場することで始めたが、半ばに至る前に団体で出ることになっていた。後半に入ると、埋め尽くされた行動がガラガラになって、三人が一緒に座るのは真理安たちだけであるようにもなってきた。それでも、羽空の集中は衰えなかった。最後まで、すべての試験を見守って、失敗たびに喜びの微笑みが垣間見られた。

いよいよ最後の学生が恵純理英の質問に答えて、合格して降壇した。羽空も立ち上がって、恵純理英に会釈してから、真理安と華多離菜にお辞儀した。

「お付き添い、ありがとうございます。勉強になりましたし、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。」

「楽しかったですか?」真理安の声には怒りが聞こえたが羽空はただ笑って、頷いた。

「楽しいところはいっぱいありました。では、これで失礼いたします。」

真理安は呼び止めようとしたが、華多離菜が手を手に乗せて、辞めさせた。

「羽空を敵にするべきではありませんわ。味方ではなくても、敵に回ってもさらに大変ですよ。」とつぶやいた。

真理安は深呼吸を取りながら、自分を落ち着かせた。

「確かに。が、見た?失敗に喜んだぞ。嫌な奴だな。」

「それはそれで。」と華多離菜。「でも、合格率を計算しました。8割を超えましたわ。」

「落ちたな。」

「確かに落ちましたが、他の学堂の中央値を超えますよ。」

真理安が怒りを忘れた。

「っていうのは、廃堂の言い訳になるはずはない。そうだろう?」

恵純理英が講壇から降りて、笑顔で二人を迎えた。

「そうだと思います。自信を持って評議員会に行きましょう。」