椿堂26

大学の規則を詳しく調べれば、定型の議論は公開されるようだった。華多離菜はそれは当たり前であると主張したが、真理安の抵抗感はまだ強かった。人の前で自分の試験を行うことは嫌だそうだったが、仕方はなく、椿堂の門に知らせを張って、講堂で議論を行うことにした。当日の朝、表門を開くと、外で大勢の男子学生が待っていた。講堂に入らないぐらいの人数で学堂に入ろうとしたので、真理安も華多離菜も案内役に使役された。

「あら、例の少女たちだ。おはよう。」

「羽空理事、来てくださいまして、後光栄と存じます。」と真理安が迎えた。華多離菜は黙って、深くお辞儀した。

「いやいや、出席するのは当然だろう。このような機会は滅多にないよ。数百年ぶりの定型議論になるし、女子学生ばかりだ。楽しみにしている。そして、いた方がいいと思ったね。問題が起こらないように。」

「私たちは規則に従いますので、問題は起こさないように努めさせていただきます。」と真理安。

「あ、違う、違う。すみません。あなたたちのことは心配していない。今は気を尖らせて正しくしているので、問題をわざと起こすはずはないだろう。いいえ、問題の原因は別なところから。あ。きた。やっぱり。」

谷入警備長が警備隊と一緒に近づいてきた。

「この集まりは、無断である。すぐに解散しろ」と、挨拶せずに、真理安と華多離菜に命じた。

「警備長、そうではありません。」羽空理事が言った。

「私のところに許可申請が届いていないし、規則で学堂を超えて五十人以上が集う集会には許可が必要であると明記されている。解散しろ。」

「この集いは定型議論です。定型議論の規則で、規則で許可は定まっています。止めることはできません。しかし、傍聴者の案内に手伝ってもらえたら、この少女たちは助かると思います。」

谷入は憤慨すると言わんばかりな顔で理事に背向いて、後退したが、他の警備員は、羽空理事の指導で案内に仕えて、なるべく傍聴者を収容させた。羽空は講堂の前の方に座って、隣で二つの席を確保した。

「ね、真理安、華多離菜。自分の試験が終わったら、ここに来てね。一緒に進行を見ましょう。」

「いいえ、理事。私たちはそれほどの席で座る資格は持っていない。」と華多離菜が素早く断ったが、羽空は諦めなかった。

「資格って?私が依頼したでしょう。それはもう充分の資格になっています。頼みます。ここに来て、一緒に見学しましょう。」

真理安は華多離菜の方を見た。華多離菜はちょっと黙ってから、またお辞儀した。

「お言葉に甘えて。」と受け入れた。

「よし。待っているよ!」と笑顔で羽空が言ったが、二人は控え室に急いで向かった。

「それは、どういうこと?」真理安が聞いた。

「よく分かりませんわ。定型議論の過程を見守ることは、理事が仰る通り当然でしょうが、私たちと一緒に見ることは、不可解です。何か企んでいると思うしかありませんわ。気をつけましょう。」

「わかった。でも、まず定型議論だな。いやだ、すごく緊張する。」

「大丈夫よ。真理安なら、問題ありませんわ。」

「でも、皆が見るし。」

「真理安さんは最初ですから、すぐに終わります。」

「えっ?なんてこと?」

「真理安さんの定型議論は一番ですよ。確認したでしょうね。」

「いやだ。いやだ。いやだ。間もなくだよね。どうしよう?」

「真理安さん、大丈夫。では、恵純理英先生の準備はできているようですので、行っていらっしゃいませ。」

椿堂25

教室で真理安が一年生の練習を見守った。一人が手からお水を大量桶に注いだ。

「よし、できたね。」と真理安が言った。「ただし、やり方はちょっと微妙だな。その手振りは、最近の作法だよ。この試験には、600年前の作法が定まっているよね。」

「あっ、そうだったんですね。すみません。」

「いいよ、いいよ。繰り返して練習してきたやり方をすぐに変えられるとは思えないね。手をこうで、足もこのように動かす。足を忘れずに。」

「そうですね。このようですね。」

「近い。もう一回見て。こうして、左足をここに少し蹴って、止める。」

「こう?」

「ああ、そうだね。じゃ、練習しな。」

「はい。」真理安が次の学生に移った。

「植物は元気ないね。」

「すみません、真理安先生。」

「僕は、先生なんかないよ。」

「真理安さん。この呪文は難しいですもの。」

「そうだな。僕も苦労したよ。植物は苦手なんだ。」真理安が微笑んだら、学生も笑った。「では、もう一回見せて。」

入り口から華多離菜が風景を見て、真理安の視線が近づくと笑顔で壁の後ろで隠れて、自分の教室へ向かった。

日が沈むと、真理安が教室を閉じて、食堂で肉なしの給食を食べた。華多離菜が隣で座った。

「いいですか?」

「もちろんさ。ああ、疲れた。」

「どうですか?」

「そうだな。3割は必ず合格する。4割は残る時間で水準に至ると思う。残りの3割は心配だ。」

「3割はいいですわ。7割の合格率では1位になりませんが、学歴不振から程遠いでしょう。」

「それはそうだけど、通常の過程であれば合格率は9割を超えるはずなんだよ。その2割は、私たちのせいで失敗するだろう。それは許し難いんだ。」

「気持ちが分かりますわ。どうしますか?」

「恵純理英先生と相談する。特訓をすれば、合格率を上げられるかも。」

「そうですよね。」華多離菜がちょっと食べて、真理安を何回も覗いてみた。

「何?」

「いえ、特に何もありませんわ。」

「言いたいことがあるんだ。分かるもん。じゃ、言いなさい。」

「かしこまりました。」

「華多離菜!」

「はい、はい。来年度のことです。来年度、どうしますかしら。」

「えっ?あ、そういうことか。来年度もこのようなことになったら嫌だよな。肉もないし、勉強の内容も古い。」

「そうですわ。」

「勉強は問題にならないと思うよ。評議員会は、規則の基準を刷新するはずだ。だって、この古い技術で卒業するなんて、恥ずかしいんじゃない?大学にとって。そして、真面目に基準を設けるに決まっている。」

「そうかしら。」

「そうだ。間違いない。」

「でも、他のことはこのままかしら?」

「ああ、それは嫌だな。女列安道先生の復帰は望ましい。しかし、それをどうやって実現するかは、分からない。華多離菜は、規則で解決策を見つけた?」

「まだですわ。この点は、評議員会の裁量に入るらしいです。」

「そっか。では、まず椿堂が廃堂にならないようにする。将来を確保してから、将来を計画しようね。」

椿同24

椿堂の門が閉まっている。パンと野菜を搬入する商人も門で荷物を学生に手渡して、塀の中へ入らせていただけない。肉を運ぶ商人は滅多に近づかないが、女子学生が喜んで出向いて、荷物を受ける。誰も入らないし、学生も外へ出ることが珍しくなっている。男子学生は、門周辺の居酒屋で群れて、窓のない石壁へ視線を向かって、門の動きを待ち望む。しかし、門が開いても、出る学生は制服を正しくして、頭に帽子をかぶり、世間話をせずに用事を素早く済ます。噂が飛び交う。大きな魔術を隠すために封鎖されていると。学生が密かに大学を出ていると。兵士になるために秘密訓練をしていると。性的な呪術を実現していると。

証拠も根拠もない。ただ時間潰しででっち上げの話だが、一人歩きする。噂と疑いになる。評議員会が理由として、学堂の立ち入り検査に踏み込む。谷入警備長と羽空理事を先頭に調査団が門へ進行して、叩いて入らせるように訴える。

門がゆっくり開く。中から三人が出向いて、先頭に恵純理英匠が立つ。調査団は入らされるが、門がまた閉まる。居酒屋で待つ男子学生には情報が漏れない。

「ご迷惑をおかけしております。」と恵純理英が言った。「お忙しい中、調査を必要と感じさせてしまいまして、申し訳ございません。」

「黙りなさい。」と谷入が怒鳴った。「ここで何か不吉なことを行っているのは明白だ。精密検査する。」

「畏まりました、警備長。」

羽空は、谷入が見るところより、頭を傾きながら恵純理英や学生を見つめた。しかし、最初は調査団に同行して、何も言わなかった。

図書室で学生が静かに勉強していた。羽空は、読んでいる本を一々検査させたが、定番の教科書ばっかりだった。学生を立たせて、勉強道具なども調べたが、その時羽空が学生を一周して、制服を確認した。その厳しい眼差しの下で学生が震え始めたが、それでも羽空は何も言わなかった。恵純理英も、言葉を控えた。

調査団が食堂に進んだが、調理中の食事は野菜とパンだけだった。谷入は倉庫なども探ったが、そのような食材しかなかった。谷入の挫折感が明白に高まり、寮へ向かって、入った。ベッドの間は目隠しによって遮断され、個室のような構造になっていた。それから、浴室の方へ行ったら、恵純理英がやっと言い出した。

「警備長、すみませんが、学生は今使っています。」それでも、谷入は止まる気を示さなかった。入り口に着いた瞬間で、羽空がやっと言葉を出した。

「警備長、待ってください。浴室に乱れに入ってはいけません。」

「何かを隠しているかもしれない。」と強く反発して、扉を開けようとした。

「谷入警備長!やめなさい!」羽空の声は厳しかった。「まず、恵純理英匠を入らせて、学生の支度をさせろ。」

「証拠隠蔽の余裕になる!」

「すべてを浴室に隠そうとしたら、数分で隠蔽できるはずはない。それを言い訳に女子学生の浴室に入らない。恵純理英匠、支度をお願いします。」

「了解しました。少々お待ちください。」恵純理英が浴室に入って、すぐに学生三人が濡れた髪で出て、慌てて着た制服を正しながら調査団に挨拶した。調査団が入ったが、お風呂以外何もなかった。

やっと調査が終わったが、羽空はまだ検査を続けようとした。しかし、羽空が許さなかった。

「お邪魔しました、恵純理英匠。ここの学生は、確かに規則に従ってやっていますね。」顔はちょっと悲しかったが、恵純理英は会釈で言葉を受け入れた。

「ご判断はありがとうございます、理事。」

椿堂23

真理安が華多離菜の制服をもう一回確認したら、華多離菜が真理安の方を正した。

「心の準備はできた?」華多離菜が頷いた。「じゃ、行くぞ。」

真理安が扉に三回優しく叩いた。奥から声が届いた。

「入れ。」

二人が恵純理英の研究室に入って、扉を閉めた。

「お前か。何?」恵純理英の声は何か言ったら疲れていた。

「先生、」真理安が言った。「お話がございますが、よろしいでしょうか?」

「謝罪はもう無駄よ。」

真理安が床を見て、深く息を吸ってからまた先生の目を見て、続いた。

「それはよくわかっております。謝らなければならない事実を痛感致しますが、残されている命が絶えるまでお謝り致しても、過ちを取り戻しもできますまい。虚しい謝罪の代わりに、償いになることは期待出来ることを差し上げたいと存じます。」

しばらくの間、恵純理英が二人を見つめて、黙っていた。

「そうですか。では、聞きます。話してください。」

「椿堂を守ることは可能だと思っております。」

「そうなんですか。あなたたちが守れると思いますか?若者の誇りは苦しいです。もう充分したと思います。もう止めて欲しいのです。この学堂の大師がいなくなってしまった。女列安道先生はもうこの街にいません。どこへ行ったかは、私さえ分かりません。分かった?先生がいても、資格停止である限り、守ることはできないが、いて欲しいのです。」半分叫んで、恵純理英が急に黙って、学生に背いて窓の外を見た。部屋は閑静になった。

「先生、申し訳ございません。卒業の免除が深刻な問題になるのは痛ましく存じます。」真理安が躊躇した声で話し出した。「それでも、救済策がございます。」恵純理英が向かなかったが、背筋を伸ばした。「華多離菜が、華多離菜さんが教えてくださいました。大学の規則には、600年前の基準はまだ有効であることを。」恵純理英が急いで顔を合わせた。

「本当ですか?華多離菜、間違いはないのですね。」

「せ・・・先生。」華多離菜の手が震えて、拳にした。「間違いはございません。」

「数百年前にそのような規則があったのはもちろん知っていますが、もう廃止されたんじゃないの?」

「廃止されていません。」華多離菜の自信が話す次第強くなった。「一昨年、免除の源泉を調べようとしました。大学の記録で追えば、基準の改定から10年以内現れましたが、さらに過去に遡れば同じでございます。ただし、今回、免除の内容が広がりました。基準の一部を免除することがすべての卒業生に及びましたし、そして基準の全てを免除することも表出します。500年前に、誰一人も基準を満たしませんでした。その時点、評議員会の議事録で基準の改定の議論がありますが、改定案は可決されませんでした。廃止案も提案されましたが、採決に至りませんでした。その理由として、基準は存在しなければ、評議員会に免除する権限もなくなるということでした。探しましたが、廃止決議は見つけませんでした。存在しないと確信しています。」

華多離菜が終われば、恵純理英の顔は明るくなっていた。

「本当ですか?その基準、お分かりですか?」

「はい、先生。持ってきました。お見せさせていただけますか?」

「はい、ぜひ。」