椿堂2

教室の外で、華多離菜{かたりな}が待っていた。

「どうだった?」

「女列安道だった。」真理安が言い捨てた。

「女列安道センセイ!」華多離菜が小さな声で戒めた。「今でも聞いてるでしょう。」

「先に去ったじゃない。もう姿は消えた。」

「いなくても聞こえると言われますよ。呪力は強いです。」

「できるだろう。が、僕たち子女の話を聞くために力を費やすものか。それほど関心はなかろう。」

「先生ですけれども。」

「嫌な奴だ。あっ、ちょっと支えて。」華多離菜が素早く手を出して、真理安を傍で支えた。真理安は力を抜けて、友達に寄り付いた。

「大丈夫?」

「まぁ、うん。ただ。ちょっと座らせて。」

「ここ?椅子はありませんわ。」

「そうだね。寮まで支えてもらえる?」

「いいわよ。では、腕を私の肩に載せてください。はい、その通りです。一歩ずつ、歩きましょう。」

「ありがとうね。大変疲れた。」

「光の呪いでしょう?」

「うん。」

「それはきついですわ。私だって、到底できませんよ。」

「華多離菜は、植物は得意けどな。」

「まあ、本当にそうかしら。真理安さんこそ、植物でもうまく操れますよね。」

「まあね。」

二人は寮の扉について、真理安が手を出して、指の振るいで開けた。中に入った途端、椅子に落ちて、頭を手に置いた。

「でも、疲れた。女列安道は無理を押し付けるぞ。光は、普段匠になってからの技じゃん。」

「お水を持ってきますね。女列安道先生は、真理安さんの才能を認めているのではないでしょうか。」

「本当にそうと思うか?むしろ、失敗させようとしているじゃない?3年生の科目はもう履修したから、30歳の技を押し付けているだけじゃん。」

杯を持っていた華多離菜が微笑んだ。

「そうかもしれません。真理安さんがいつも女列安道先生の悪口をしていますので、先生の復習でしょう。」

「ふざけるな!」真理安が頭を上げて、華多離菜を見つめた。「本当に辛いよ。」華多離菜の顔が瞬く間に変わった。

「すみません。そうですね。どうぞ、お水を持ってきました。」

「あ、どうも。」真理安が水を飲んで、ちょっと気力を復活した。「いやいや、本当にムカつくな匠だな、女列安道め。」

「真理安さん!」華多離菜はショックで声を上げたが、次の瞬間また小さくした。「本当に聞こえるかもしれませんよ。そして、匠ではなく、大師です。もう数百年間この学堂を指導しました。」

「もう引退したらよかろう。」華多離菜を見て、真理安がすぐに続いた。「はい、はい。聞いているだろう。とにかく、次の時限の前に着替えるね。汗は嫌だ。」

椿堂1

真理安{まりあ}が意志を放って、光を指先につけた。赤く輝いて、指の間を舞って、バラのように咲こうとしたが、あっという間に消えてしまった。

「もう一度」と女列安道{めれあんどう}が厳しい顔で命じた。「収集しながら。」

「はい、先生。」真理安が深く息を吸って、意志を引き締めた。女列安道先生を頭から外して、女を閉じて・・・

「目を開けなさい!」女列安道が集中を一瞬に壊した。

「は、はい。すみません。」女列安道先生がなぜそれほど嫌なことをいつも言うかは、真理安には不可解だったが、目を開けたままで意志をまた引き締めようとした。先生はいたが、関係ない。部屋の石壁も模様として、そしてただの色にさせたら、呪いの模様を記憶から蘇らせた。

「心には炎がある。炎が輝く。輝きが血管を通る。血管が指先に辿る。光が広がる。」

光はまた指先から飛び上がった。前より明るくて、前より大きくて、部屋全体が赤く染まるほどの光の帯が手から流れ出て、その空間を巻き締めるようにした。1秒、2秒、真理安がぼんやりと見つめたが、また集中して形作りと取り組んだ。光は、指先から伸びることを胸で感じて、動きを左右しようとした。

しばらく反応はない。真理安は冷え汗を感じるが、辞めない。光には波が始まる。荒波が広がって、変わり続ける光しか見えなくなった。そして、ゆっくり、ゆっくり、光が手の方へ集まってくる。部屋には暗みが戻ると同時に、掌の上に光の塊が現れて、強くなって、眩しくなる。目を細めながら、真理安が光を玉にさせた。

玉がさらに巻き入れて、花びらになって、掌に咲くバラを形成する。

「それで良い。」女列安道先生の声は包丁のように真理安の耳を貫いた。集中がなくなって、光が砕いて部屋中を飛び去った。学生が膝に倒れて、手でも重くなった体を支えた。顔から汗が流れ落ちて、服もびしょ濡れになっていた。何も見えなかった。光の終わりしか目に焼けていなかった。

「今日はまた一歩だった、真理安。ただし、最後の制御は悪かった。乱れに放つな。力が戻るまでに、集中しなければならない。では、今はこれまで。」

真理安の手足が震えて、立つこともできなかった。口を動かそうとしても、まともな音を出すこともできなかった。

「一体何をやっている、子女?立ちなさい。」

足が思うままに動かないが、なんとか立って、先生の方に向けた真理安は、恨みを表さないように手を顔の前に合わせて、挨拶を言った。

「貴重なご指導を賜り誠に有難う御座います。」