生前退位

先日、NHKが天皇陛下が生前退位の意向を示されたと報道した。宮内庁がすぐに否定したが、ちょっと騒がされた。今回、私の意見を述べたいと思う。

結論から言うと、賛成している。理由は複数ある。

まずは、天皇陛下も人間の一人であられる。自分の職業を自由に選ばれる権利を持たせるべきである。もちろん、誰にも自由に皇位に就く権利を与えられるわけはないが、伝統に従ってお就きになられた天皇陛下には、退位になられる権利を保障しなければならないと私は思う。前にも触れたかと思うが、個人的に天皇制を疑問視させる状況は、皇族の自由の問題である。その束縛をなるべく和らぐべきであると強調したいのだが、生前退位はそれに必要不可欠である。

そして、「前例のない」という表現は聞いたが、日本の伝統を見れば、生前退位はむしろ伝統的である。特に平安時代から中世にかけて、天皇の大半が生前退位した。現行の皇室典範は天皇制の伝統を大きな2点で西洋を真似するために塗りつぶす。一つは男系女帝を認めない点で、もう一つは生前退位を認めないことである。つまり、日本の伝統を復活するためにも、生前退位を認めるように皇室典範を改正した方が良いと思う。

それは理念に基づく理由だが、実践的な理由もある。天皇陛下が崩御する前に、その崩御を前提とする支度に着手することは無礼極まりない。必要性を感じても、落ち着いて行うことはできないだろう。一方、天皇陛下御自らがお決まりになった退位のための準備は、無礼に接することはない。そのため、より円滑にできるはずだ。些細なことを言えば、天皇陛下が12月31日の最後に退位したら、新しい年号が新しい年と一緒に始まるが、それは紛らわしくない。元年の元旦が誕生する。同じように、大嘗祭を元年に執り行うことは可能となる。準備には半年程度は必要だが、代替わりが正月に行ったら、その余裕はあるし、上皇の崩御を忌む必要もない。

生前退位を認めたら、正式な儀式を取り入れた方がよかろう。例えば、夜の10時ぐらい、天皇陛下が賢所などで退位の意向をお告げになられたら、12時前後で剣璽継承の儀を執り行う。そして、午前2時ぐらい、天皇陛下が践祚を賢所などでお告げになられる。お正月の四方拝が新しい天皇の最初の儀式になる。神道では、夜中に10時と2時に儀式を行うことは少なくないので、伝統を汲んでこの重要なことを正式に記念できる。

天皇陛下の御年齢と公務の重さを考えれば、生前退位をお考えになられるのは当然であろうが、本当の理由は関係ない。天皇陛下のご自由と大御心を尊重するために、生前退位を認めなければならないのである。


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コメント

“生前退位” への3件のフィードバック

  1. Sのアバター
    S

    上皇として京の御所へお移りになられ、経験豊富なので神事の補佐をなさるのも良いと思う。
    旧宮家と公家の復帰を望む。

    1940年(昭和15年)6月 昭和天皇関西御巡幸

  2. チャート出意人のアバター

    S様、コメントをありがとうございます。そうでうね。公家の復帰のため、法律上であれば、憲法改正は必要となりますので、難しいです。事実上に止まったら、もう復帰しているのではないかという印象もあります。旧宮家の問題は本当に難しいと思います。皇室外で生まれた人が皇室に復帰される前例は私が知っている限りありません。(一旦臣下された方が皇室に復帰する例はありますけれども。確か、醍醐天皇だったような気がします。)前例のない方法で男系を切れようとしたら、女系天皇を認める選択肢も視野に入れるべきだと思わざるを得ません。

  3. Sのアバター
    S

    連綿と皇統を切らさないために旧宮家の復帰は必要不可欠と認識しています。公家の子女は代々正室となられますし、天皇家の文化資本を維持するための内堀のようなもの、権威を保つため復帰なさるべきかと。
    公家は現在でも政財界に凄まじい影響力を保持していますし。
    http://news.livedoor.com/article/detail/11774153/

    昭和3年(1928年) 昭和天皇 即位の大礼