非常事態条項

参院選が終わって、いわゆる「改憲派」は衆参両院で3分の2を占めるようになった。とはいえ、憲法改正に前向けな姿勢であるものの、必ずしもその改正の内容について一致するわけではないそうだ。特に第9条の改正のための3分の2を確保するのは難しいようだ。(公明党は慎重であるからだ。)第9条の前に、「非常事態条項」を加えようとする動きのほうが強いだろう。

非常事態というのは、普段憲法や法律に許されない権力を行政に与える措置である。その目的は、喫緊な状態に応じることだ。抽象的に考えれば、その必要性は認めざるを得ない。東日本大震災の当事者の話を聞けば、非常事態は宣言できなかったために支援や復興が滞ったことはあるそうだが、それは信じ難くない。一方、トルコの状態を見れば、非常事態の危険性も痛感する。非常事態を宣言した行政府には、過大な権力が与えられ、独裁的な政治に展開する可能性はある。

この二つの問題を鑑みて、適切な非常事態の規則を考えなければならない。

私の考えでは、まずは非常事態になっても表現の自由と言論の自由を制限することは許すべきではない。政府はすぐに批判を抑制しようとするが、非常事態でからこそそのような行動を許してはいけない。他の権利を制限しても良い。例えば、移動や集合する権利を制限する必要がある場合はすぐに思い浮かぶ。例えば、疫病が流行っている場合、感染を途絶えるために人を自宅待機させる法令は必要となることもある。同じように、所有権を侵すことも必要になるかもしれない。例えば、震災の後で、道を開くために私有物を破壊する必要も生じるだろうが、許可を得ずに行うことも視野に入れなければならない。その場合、後日に賠償するべきだが、まず行動しなければならないだろう。

しかし、このような権限を悪用する余地は多い。そうでなければ、常時から政府に与えても良い。その悪用を防ぐ方法はあるだろう。それについて、提案がある。

非常事態を宣言する人、そして非常事態で大きな権限を持つ人は、首相としない。都道府県の知事とする。その上、その非常事態の範囲は当然管轄する県の全部または一部に及ぶ。県に非常事態が宣言されたら、知事は法律を塗りつぶす法令を出す権利を持つし、自衛隊の活動を命じる権利も持つようになる。中央政府には部分的に止める権利は失う。しかし、非常事態を終止させる権限は与える。閣議決定、または衆参両院の立案によって、どこの非常事態でも終わらせられると良い。知事にも当然終止する権限があるし、県議会にも決議で終わらせる権限を与える。その上、非常事態の悪用は、謀反として刑罰することを憲法で定めるべきだ。つまり、権力者が非常事態の扱いを優しく見るために、権力者に対する逆らいも優しく見なければならない。

すぐに思い浮かぶ非常事態は自然災害や疫病、またはある地域の混乱である。そのような非常事態は、その地域を管轄する自治体が対応するのは良い。常時の状態が中央政府よりよくわかるからだ。そして、非常事態が悪用されたら、閣議決定で終わらせることはできるし、非常事態によって閣僚の権限も制限されているので、不要に伸ばす可能性は低いだろう。

効果を高めながら危険性を抑える方法であると私は思う。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: