祓え論:その1

祓えは、穢れを除ける儀式であることは言うまでもないだろう。しかし、穢れを正しく整っていない状態と定義したら、祓えの意味は具体的にどうなるだろう。何かは整いっていなければ、整理したら良いのではないか。それは、特別な儀式は不要だろう。

確かに、そのような場合は少なくない。穢れをこのように見たら、神道の実践の一部は物事を適切に整理することである。それは沐浴から生活の全体像まで及ぶが、それは神道的な生活の一部であると言えても、確かに儀式は不要である。では、儀式の位置付けをどうしよう。

まずは、人間は完璧なものではないので、日常生活で行動などがずれることはある。そして、世界はややこしいので、仕方なく身の周りには整っていないものが発生することも多い。それは良くないと認めるが仕方がないことも認めて、祓えの儀式でその不整理を払拭する。この儀式で、理想も現実も認める。理想は、整っていないものはない状態だが、それは実現できない。しかし、その事実のため儀式の必要性が発生する心理で、理想を手放さない。無理があるものの、理想として維持する。この意味は、普通の祭りの前の祓えの意味になる。思わず思わず積んできた罪穢れを落とすための儀式である。ただし、この意味の祓えは、なるべく穢れを実践的に整理する行動を前提とする。

もう一つの意味は、意識するものの整理できない穢れの対応だ。重要な一種は、過去の不整理だろう。過去の問題であれば、もう整理できないのは決まっている。それに、現状でもなるべく直そうとしてもきちんと整理できない部分を祓えで片付けることもできる。ある意味、これは心残りの処理であるといえよう。つまり、無意識の穢れが発生することを認める祓えと同じように、実際に除けない穢れを処理する儀式である。それで、精神的に落ち着いて前向きに取り組めるようになるのは目的だ。つまり、過去の問題についてずっと悩んだりせずに、現状を受け入れて将来に向かっていくことだ。これは、個人の穢れの意識に基づく意味だから、悪用されるおそれはない。本人は何かを穢れの問題として解釈すれば、当然整理しようとする。全力でそうするに違いない。祓えは、全力が足りない場合に備えた手法である。もしかして、実際に片付けられるのにその手法に気づかず、祓えを選ぶ場合もあるのではないかと思われるが、その場合でも問題にならないだろう。本人の意識で問題は解決されたら、それは解決であるからだ。全てが適切な状態になっている。

祓えには3つ目の意味があるとも思う。この意味はより難しいので、次回論じたいと思う。


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コメント

“祓え論:その1” への5件のフィードバック

  1. Sのアバター
    S

    穢を整ってない状態、適切な場所にない状態と定義するのならば、今日、帰宅途中に空き缶を拾って捨てたが、私の行為は道路の秩序を保ち事故の遠因を取り除いたので、ゴミが適切な場所にない状態という定義の‘祓った’という行為に合致する。誰も座っておらず、椅子が下がってなかったので、元の場所に戻す行為は整っておらず適切な場所にないという定義に当てはまり、尚且つ精神衛生上良い行為なので‘祓った’という行為になるのだろうか。

  2. Sのアバター
    S

    法律に当てはめるとどうなるだろうか。
    窃盗はもちろん適切な場所にない状態を作り法が整っていないので、法に沿って処罰する行為は‘祓う’という行為になる。では更に難解な戦時国際法を例に取ってみる。便衣兵(ゲリラ)というのは国章のある戦闘服を着用しておらず、武器を手に持っている自然人を指す。私服で武器を取っている状態は正規軍を欺き攻撃する段階にあり、戦時国際法上即処刑するのが通例である。所謂南京大虐殺というのも、この便衣兵を大量虐殺と喧伝しているというのが否定派の論理だ。之も法が整っておらず、攻撃を受ける可能性が高いから、自身の状態を保つ(命を守る)ために即処刑するのは‘祓う’ということになる。

  3. Sのアバター
    S

    法律の制定を‘祓う’という概念が包含されているのならば、勅令は正しく天皇自ら祓ったとなる(今は勅令という用語は使われていないが)。とはいうものの、昔も現在も立憲君主制であるから、法令⊃(勅令≧政令>省令)という法的力学が成り立つものの、大臣による花押が捺印された文書が届けられ、陛下が御記名し金印が押された時点で勅令、政令という区分無く祓われた(発布し公布された時点で祓われた)ことになる。

  4. Sのアバター
    S

    要するに、為政者が考え官僚が文書(祓詞)を作成し、陛下が唱えた(御記名、金印が押され発令し交付された)となる。

  5. チャート出意人のアバター
    チャート出意人

    S様、コメントをありがとうございます。考えさせていただきました。時間を取れれば、社会との関係についても書きたいと思います。法律は祓詞か。そういう事柄も見出せるかもしれませんね。